第14話

 放課後、白雪みおんが下校するのに合わせてワットソンが監視に戻った。


「なにもないんだよな」

 午後5時から数時間。午後9時を超えるまで白雪を監視しているワットソンがぼやく。素行調査のときのように、人物の一挙手一投足を見ているわけではなく、相手がどう動くのかを監視するのは、心理戦に近いものがある。

 ワットソン自体素行調査の際、数日張り込んでることもザラだが、動きが無い人物を相手にするのは苦なのだろう。

「そろそろ動くだろうな」

 ワットソンがぼやいた数分後、白雪を監視している別の影が、白雪邸宅に向けて移動を開始した。

「どうする?」

「オレは正面で待機する。ワットは敵の監視」

 シャーロックは強襲用のバイクを監視しているビルの前に用意していた。襲撃者の追跡にこれを使う予定で乗って来ていた。

「襲撃があり次第連絡、そのまま可能なら強襲して救出…………」

 シャーロックはなにかを考えるように間を置き、再び喋り出す。

「ではなく、追跡をしながら様子を見る。少なくとも攫ってすぐに実験をできるようなものを用意していないようだしな」

「了解。和光の許可は?」

 ワットソンの戦闘力では民間人を殺さずケガさせずに生け捕りする方が難しい。

「ある。そっちは任せるぞ」

 シャーロックは強襲用バイクに乗り、白雪邸へと走らせていった。


「さてと、こっちも動き始めるか」

 小太刀とシャーロックに言われて事前に用意していた秘密道具を手に取り、監視対象との距離を詰めるために、監視していたビルから別のビルへと跳び移る。

 夜陰に紛れながら、ビルの屋上を家屋の屋根の上を忍者のように走り、対象との距離を詰めていく。

「この辺か」

 茜音邸宅から約200メートル地点の民家の屋根で足を止める。ワットソンが見つめるその先には、白雪みおんを監視していた組織の人間が使っていたハイエースが置かれていた。これにある仕掛けを取り付ける。盗聴機と発信機だ。

 シャーロックは白雪みおんを誘拐させることで、予定より大きな成果を上げられると踏んで、攫わせてから本体ごと叩く方向に変更していた。

 無論リスクも承知の上での作戦である。それでもシャーロックには成功することを予想していた。

「よし、設置完了。さっさと定位置に戻るか」

 ワットソンが盗聴器と発信器を設置し終わると、茜音邸を視認できる場所に戻る。


「シャロ、向こうが動いた」

 定位置に戻る途中、監視していた襲撃者が動きを見せたことをシャーロックにインカム越しに伝える。

『了解。侵入を確認次第正面から乗り込む』

 シャーロックが白雪邸前にバイクを停め、タイミングを窺う。

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