第4話

「なあ、何がわかったんだ?」

 連理探偵事務所に逃げ隠れるように帰ってきたワットソンは、帰ってそうそうパソコンに向き合いキーボードを叩き続けるシャーロットに問いかける。

「結論から言えば、犯人の特徴だな。それと殺害から逃走した経路だ」

 シャーロットにしてみれば、人物特徴と逃走経路がわかってしまえばほぼ特定できたようなものだ。

「となると、和光にメールか。さっさと犯人〆に言ったほうがいいんじゃないか?」

 ワットソンの言い分はわかるが、相手がどういう特性を持っているのかを理解しているシャーロットは呆れたようにワットソンに向き直る。

「ワット。はっきり言えば、逮捕権を持たない僕たちに、生け捕りできないくらいの相手だから和光に報告するだけだ。報告する前に仕留めたら後が面倒だぞ」

 勝てないではなく、生け捕りできないから殺すしかない。そうなると報告せずに殺害したということで報酬を減らされる。それをシャーロットは嫌ったに過ぎなかった。

「あー、確かにそれは面倒だな。んじゃ返信が来たら狩りに行くってことか?」

「そうだ。それまで待機ということになるな」

 メールを送り休憩にしようとしたところで、慌てたように和光刑事が入って来る。

「ハァ……、ハァ…………ッハ―、シャーロック、ワットソン。緊急事態だ!」

 冷静新着に状況を判断し、部下に指示を出す立場であるあの和光がここまで騒々しく駆け込んでくる。その状況にワットソンだけが驚いていた。

「和光、落ち着け。状況は分かっている。新しい被害者が出たんだろ?」

 まだ呼吸が整わない和光の様子からなにがあったのか判断する。

 大方犠牲者が増えたということだろうが、それだけならここまで急いでくることは無いだろう。

「被害者の性別はわからないが、殺害された奴の臓器、そうだな肝臓あたりを奪われてるんだろ?」

 和光の目が見開かれる。

 なぜそこまでわかっているのかを知りたいといいたそうな顔だ、まだ呼吸が整わないのか、ゼイゼイ言っている。刑事のわりに体力がないようだ。敏腕刑事とて年齢には勝てない。

「こっちは容疑者の目星はついている。そのメールを送ったんだが、入れ違いになってしまったようだな」

 和光が持ってきた資料をワットソンから回収し目を通す。


 被害者:桐生組構成員湖南こなんはじめ

 被害者の外傷は酷く、単一の凶器ではなく複数種類の凶器を用いて殺害されたようだ。


「こいつは酷いな。桐生組ってこんながっつりした抗争があるイメージないんだが」

 桐生組自体は比翼市を中心に活動している指定暴力団ではあるが、殺人バラシ違法薬物シャブを扱わないから公安もそこまで注視している組織ではない。しかし、暴力団としての結束力が他の組織よりも強いせいで、度々公安と衝突することはあった。

「そうだな。あの桐生組とはいえ組員をタゲられたバラシがあれば、確実に公安がマークしとかないといけない事案になる。ホシをさっさと割れなきゃマジでヤバい状況だ」

 容疑者が割れているとはいえ、証拠を確保できていない。

「容疑者は割れている。そいつに聞こう。和光、アシ出せるか?」

 シャーロックは二丁銃をホルスターに収め、出発準備を始める。和光の返信が来る前に本人が先に来たことで準備が終わっていなかった。

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