第2話

 ここは都心から少し離れているが、探偵業をするには適度に仕事が舞い込んでくる。探偵業を生業なりわいとするなら、ここに拠点を構えるのに丁度良いと言われていた。

 探偵の仕事は主に人探しと素行調査。そして浮気調査と不倫調査、たまに他の依頼も舞い込んでくるが、おおむねこの4つが探偵の大きな仕事だ。



「シャーロック、ワットソン。仕事だ」

 警視庁から派遣された刑事が仕事として案件を持ち込んでくる。

「ずいぶんと物々しい資料だな」

 シャロ、シャーロックの目の前に大量の事件の資料が置かれる。

 彼は警視庁の捜査0課。特殊犯罪の捜査を専門とする組織に所属しているベテラン刑事和光兼光わこうかねみつ。非科学的及び不可解犯罪の捜査と逮捕を主としているが、警察組織の内部にそれを解析すること専門とする部門はない。そのため外部委託という形で連理探偵事務所に仕事として回ってくる。

「こいつは酷いな」

 シャーロックがワットソンに現場資料を渡す。

 シャーロックの言う通り、被害者の状態は酷く、あり得ない方向にねじ曲がった両足と引きちぎられたような両腕。肋骨を無理矢理剥がして、中身を取り出したようなあとがある。

「ガイシャは鬼灯鮮花ほおずきあざか。名字やガイシャの発見場所から鬼灯組の関係者か調べたが、その気配はなし。念のため裏社会との関係も調べたがそれもない」

 和光刑事も捜査をしているが、容疑者の目処はついていないということらしい。

「被害者の方にそういうことはないが、容疑者の方がということになるな」

 どう考えても普通の人間に出来るような殺害方法ではない。空想上の生物、バンダースナッチ辺りなら出来そうな殺害方法である。

「そうだな。の目的も判ればいいが、それをできるほどの知能がある状態だとは思えない」

 和光刑事も捜査0課の手に負えない事件だと判断している。

「危険を承知の上で受けてくれるか?」

 あくまで依頼するという形で捜査協力を要請している。

「……」

 シャーロックは何も答えることなく、ワットソンの方に目を移す。お前が判断しろと言いたげな眼差しを向けている。

「シャロ。受けよう。こんな奴を野放しにする理由はない。それに、向こうの情報が手に入る可能性があるなら、やらない理由はないだろ」

 シャーロックとしては、受ける受けないをワットソンに一任することにしていた。この手の依頼はちょくちょく入って来るが、ワットソンの食指が動くときはほぼ必ずと言っていいほど関係の依頼であった。

「わかった。ワットが言うなら受けよう。捜査の全面協力する代わりにな?」

 和光の眼を見据える。

「わかってる。捜査に関する情報提供と、ホシの逮捕、場合によっては殺害。そして帰投までの間武装の許可を取り付ける」

 和光は事務所の外に待機させていた覆面パトカーから二つのアタッシュケースを持ってくる。

「ずいぶんと準備がいいな」

「今回は受けると踏んでいたからな」

 和光刑事は二人に依頼する前の時点で、この事案を受けると踏んで準備してきていた。

 二人が運んできたアタッシュケースを開ける。まるで自分達の預けていたものの状態を確認するように、ケースの状態から鍵穴に至るまでしっかりと確認する。

「ガワの状態は前回と変わらない。中身の確認もいいか?」

 シャーロックは和光の返事を聞く前に鍵を開ける。

「まだいいとは言ってねぇだろ」

 呆れたように首を竦めるが、二人が自分の得物の状態を確認するのは当然の権利である。

 シャーロックはケースから二挺の拳銃を取り出す。白銀の二丁拳銃。

「久しいな。シャーロメシア」

 自分の名前を決めるきっかけになった銃。

「こいつの切れ味も落ちてなさそうだな。嵐華らんか

 ワットソンは二振りの小太刀を取り出す。


 二人の二本一対の武器を使う、対の探偵それが連理探偵事務所の探偵達だった。

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