第50話
どこまでも冷たい印象を持つ青年と高貴な令嬢。
すれ違う二人にどこのロマンス小説?
という感想を言いたくなった。
だが、エリカの前で繰り広げられているのはとんだ茶番だ。
恋が始まるどころか、接点を持つ段階で破綻している。
何せ、相手の男は完全拒否を決め込んでいるのだ!
しかし、これは仕方がない。
だって、彼にとってはお嬢様も自分達を虐げる側の人間に含まれている。
しかも、そのボスと言っても過言ではない。
ヒロ、ラブなごとく簡単に恋に堕ちたアリサであるが、以前は彼らと距離をおいていたのは事実だ。むしろ興味すら示さなかった。
だからこそ、お嬢様に脈はない。
エリカは二人のやり取りを見なくても結末を予想できる。
果たしてお嬢様はどうするのか?
ハラハラしながら成り行きを見守っていた。
アリサは決意したように目を見開いた。
何を言うのか!
エリカは息を飲んだ。
所が、主から出た言葉は、
「あの、一緒に落神の足を探しをしません事?」であった。
どうしてそうなる!
エリカはアリサの後ろで額を手で覆った。
突拍子もない言葉の登場に口があんぐりと開く。
美しく聡明なお嬢様はどこにもいない。
いるのは、恋に翻弄されるポンコツな少女だ。
そんな事、口には絶対出せないが…。
「俺と?」
ヒロはキョトンした。彼女が何を言っているか分からないようだ。
俺をからかっているか?
すら思っているはずだ。
「ええ」
キラキラした眼差して語るアリサ。
もう、なりふり構わず?
そこまでして接点を持ちたいの?
エリカの内心はアリサへのツッコミで溢れていた。
「なぜ俺が?」
ごもっともな返答。
「転生系の学生が犯人として疑われているそうですね。それを払拭したくはないですか?幸い、私はこの手の不思議は慣れていますの」
そんな話初めて知ったんですけど?
むしろお嬢様、その手の話苦手でしょう!
ほら、愛しのヒロ様も若干、ひいてる…。
「お心づかいは嬉しいが、俺には荷が重い…」
きっぱりフラれたわね。
今度こそ、ヒロは会話を切った。
ああ、変に会話をこねくり回すから。
まあ、冷血公爵令嬢モードを見た後だし仕方ないわね。とエリカは思った。
隣を見ると悲痛な面持ちで愛しの君が去っていくのを眺める主の姿があった。
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