第49話

 エリカが庭に降りた時、転生系学生と一般学生の集まりが出来ていた。

その中心にいるのはヒロとソール。

そして教師と向き合うアリサだった。


えっ!どういう状況?


「しっしかし、騒ぎを起こした理由に違いは…」

教師はしどろもどろになりながらアリサに頭を下げていた。

どうやら権威には弱い人物のようだ。

「そうですわね。ですが、私たちを含め、ここの生徒達はまだ未熟なのです。間違いを犯すものです。ですから、今回は大目に見てはいかがです。訓練に身が入ったまでなのですから。何せ、手合わせをすることは許可されていますでしょう?」


 有無を言わさない威圧感があった。

さすがは長主に連なる者だ。

上にたつ素質もこの方は備わっている。

ただし、そのセリフの大半は彼女が読んでいる本からの抜粋だが…。

とはいえその場に居合わせた生徒達は身動きが取れずにいるので制圧は成功だろう。


「わっわかりました」

教師は静かに陥落した。

「それから先生。先ほど、前期入学組を正学生読んだこと、あまりよろしくありませんわね。この学院は皆、等しく正当な学生なのです。お分かりでしょう?私が一言お父様に言えば、貴方の首など簡単に飛びます。言葉にはお気をつけなさって」


完全に冷血令嬢モードに入ってる。

しかしエリカは知っている。

お嬢様には領主を動かせる程の力はない。

例えこの学校の最大のスポンサーがキリュシュ家であっても、この校舎が元々は彼女の家のものだったしても、意味はない。

長主からこの地を預かっているとは言っても王ではないのだ。

さらに彼女の父親は娘の一言に流されるような人間はない。

だが、目の前でうろたえる教師には効果的だったようだ。

渋々頭を下げ、落胆したように去っていった。

午後の授業開始が近づく合図の鐘がなる。

生徒達は静かに、そして立ち去るようにその場から離れていく。

特に早かったのは学生会会長率いるエリートたちだ。逃げ足も実に早い。


 ヒロもアリサに一礼して立ち去ろうする。

「お待ちになって。BBの決勝戦では助けていただきありがとうございます」

ヒロは立ち止まるが振り返ろうとはしない。

「大した事は…」

「ご謙遜を…貴方様のおかげで命拾いしたのです。できればお礼がしたいですわ」

「結構だ」

再び足を動かし始めるヒロ。

その後ろ姿をもの欲しそうに眺めているアリサがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る