第47話

 ヒロはどう決着をつければいいのか迷っていた。

俺が勝ってもいいのか?

それとも負けるべきなのか?


目の前で炎を刃を売ってくる男は真剣勝負を望んでいるようだった。

だが、それに乗れるほどヒロはバカではないと自負している。


全く、何を考えているんだ!


頭の中で様々な葛藤がまじりあっているなど誰も知る由はないはずだ。

視界の隅にかすめるカインは、

「勝て勝て!」

とばかりに拳を振り上げていた。

そういうのは今求めていない…。

それが本音だった。

「やる気あるのか?」

そう冷たく言い放ったのはソールだった。


この場面でそれを聞くのか?


ヒロは内心、苛つきながらも、

「そのつもりだが…」

と苦悩の表情で言い返した。


「ソール、遊んでないで決着をつけろ」

学生会会長がせっついてくる。


 ソールは頷き、再び腰を下げ、上半身に力を込めた。

これまで以上に精神を集中しているようだ。

まるで、この先に訪れるであろう、煉獄に供えろと言わんばかりだ。


ああ、いいだろう。そのつもりなら…

俺だってやってやる!


ヒロは何かの暗示に掛かったようにこの決闘に燃えることにした。

剣を高く掲げ、意識を空へと向ける。

握る指が突き刺さる針の痛みでジンジンと脈うつのを感じる。

お互いに示し合わせたように、天空に炎と氷の柱がそびえたっていた。

このまま、すべて忘れて命の限り戦ってもいいと思った。

だが、そうはならなかった。


「何をやっている!」

爆音のごとく耳を通り抜けてきた図太い怒号に一瞬のうちにその場は静まり返った。

振り返ると、怒りを通り越した鬼のような中年男性が仁王立ちしていた。

この学院の古巣の教師だ。


ヒロは厄介な奴がきたと思った。 学院の中でも保守層の筆頭とも言うべき嫌転生主義の男だ。

「お前ら、ここで何をやっている!」

「申し訳ありません。先生。転生系の生徒達が我々に難癖をつけてきたもので…」

前に進み出たのはやはりベナルだった。

どこまでも要領がよく嫌味な奴だ。

「ほお、それは由々しき事態だな」

教師はいいものを見つけたとばかりにニヤついた。

どう考えてもよからぬ事を考えている顔だ。

転生系達は身構えた。

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