第45話

 古城を背景に剣を構える少年たちの姿は実に絵になる。

まるでおとぎ話の一場面を見てるようだ。

さらに彼らは歴戦の勇者のような風格を備えている。微動だにせず、お互いの動きを探り合っていた。

エリカは塔の最上階から彼らの様子をうかがっていた。

剣は少しばかり震えている。

どちらが先に仕掛けるか見ものだ。

そう思っていると、オレンジの君ことソールが一歩踏みだした。

仕掛けるようだ。

鉄同士がぶつかり合う音がこちらまで伝わってくる。初っ端から互角の戦いだ。

 畳みかけるソールとそれを軽く受け流すヒロ。

実力は拮抗しているようだった。

しかし、レンズの向こう側には傍観者たちの心の動きが透けて見えた。エリート達はソールの勝利を疑っていない。だが、転生系の学生はヒロに勝ってほしいと思いながらも負けてほしいと願っている。

 不憫な人々だ。爽快感を味わいたいけれど、その先に待つ罰を恐れている。

今まさにバトルしている青年は表情が読めないが、どう思っているのか興味は湧く。

そして、何より気になるのはいがみ合っているはずの彼らに敵意が感じられない点だ。

むしろ楽しんでいると言っても過言ではない。

 この瞬間にも剣を交える青年達。


キンッ!


片方の剣は柄を外れ地面に叩きつけられ、もう一本は真っ二つに割れる。


熱中する猛者たちには練習用では物足りなかったらしい。

彼らは再び、距離をとった。

「もうおしまい?」

そう残念に思うエリカだったが、ソールが腕に手をやったことで何をしようとしているのか直感した。


マギアメントによる神秘現象を引き起こす気だ。

BBのエリート選手にしては実に短絡的ね。

いや、相手が彼であるからか。先の決勝戦でお嬢様を助けた転生系の青年。これは面白い戦いになりそうだわ。


エリカは自分でも不思議なほど面白がっていた。当事者でないというのが大きいのだろうが、ワクワクしていた。


 そうこうしている間にソールは腕に力を込めるように瞳を閉じた。そして、何かに苦悩するような、痛みに耐えるような表情を浮かべる。

マギアが体内をめぐっているだ。

その仕組みはマギアメントに組み込まれた無数の針だ。それが皮膚を貫通することで、神秘技術を発生させる。

 今、彼の体にマギアが巡り、それは彼の手の中へと収縮する。あふれ出る赤い血は剣へと変形する。そして炎のオーラが鉄の周りを囲むように漂っていた。

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