第44話

 転生系学生は空き部屋を見つけるのが得意である。

カインが珍しく見つけてきた場所。

一般の生徒が近寄らない古城の裏手の森林を練習場だ。

広場と言っても本館と離れた別館。

それも校舎としては使われていない城の一部の前だ。だからヒロも頻繁に使っていた。

数少ない快適な場所として。

そこで気づくべきだった。

カインはどこか抜けているのだ。

何事もスムーズにいくわけはない。

この近くで正学生どもが集まっている事にも気を配るべきだった。

何より窓ガラスが機能していない城内を歩いていた公爵令嬢の姿を確認した点で悟ればよかった。エリートぶったって悪さはするって事だ。


どうせ使われていない部屋でろくでもないことをしているんだ。

それでもこいつらは許されるんだろ。

俺たちとは出来が違うのだから!


「会長、落ち着いてください。罰と言っても彼らを不当に扱ったとバレれば、惑星解放闘志派の奴らが黙ってはいないでしょう」

「奴らか!忌々しい連中だ」

ベナルは苦虫をつぶしたように吐き捨てた。

「そこでです。ここは学生らしいやり方で和解しては?」

「和解?」

「そうです会長。剣の勝負で勝った方が、この場所を使い続けられるというのはどうでしょう?」

高らかに宣言したソールとは違い、ヒロはそれのどこが学生らしい和解なのかとツッコミをいれたくなった。

「それはいいですね」

隣でカインが満面の笑顔で頷いている。


わかりやすい人だ。いや、バカなのか?


ベナルは考え込むように首を横に傾けた。

その手は顎に沿わされている。

そして、「分かった」と静かに言った。


おいおい、そこで納得するのかよ!

と思うヒロ。


「で、相手は誰にする?」そう言ったベナルへの返答なのか、ソールの視線はヒロに向いていた。


え!マジか?


キョトンとした瞳で見返す。

思わず溜息を飛び出しきそうだった。


カインにいたっては、

「同じ年代同士だからピッタリだ」と頑張れというエールすらうかがえる。

マミはもはや男同士の熱血バトルには興味ないとばかりにメルをにらみつけるばかりだ。

よほどあの青年が嫌いらしい。


そこでソールが重むろに手を差し出してくるのに気づく。

とっさに握り返してしまうヒロ。

皮膚同士が合わさった場所にゴツっとした感触が過る。

 そこで上品に笑う青年の思惑が伝わってきた気がして、再び、息を吐きだした。


ああ、本当に勘弁してほしい…。

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