第40話
「アンタ、先輩に向かって本当に失礼ね」
とマミは咎めるような視線を向けた。
「確かにお前みたいなのは学院に通わねよな…普通。今頃惑星解放闘志派とかやってそうだ」
野太い声をあげるカイン。
「はあ?冗談じゃないわよ。あんな血の気の多い連中と一緒にしないで!」
マミに間髪入れずに反論されて、肩をすくめるカイン。
「私はバカじゃないの。出来の悪い頭をフル回転させてこの学院に来たのだって、いわば人脈作りよ。初心なお坊ちゃんの愛人にでも収まれば、暮らしには困らないじゃない。そういう事考えている転生系女は多いわよ」
うわ~この人、全転生系女子代表みたいな顔しているけど本当なのか?
しかも、健全な男子の前で生々しい女の感情さらけ出してるし…。
ここでようやく彼女の胸元のボタンがずれている事に気づいた。
さらに真っ赤なリップグロスは取れかかっている。
頬にうっすらとのびているその名残が妙に妖艶だ。
スカートの裾もズレている。
こういう女はヒロが住む地区にもよくいる。
だから思い当たった。ついさっきまで誰かと密会していたと…。
彼女は着々と野望を実現へと向けているようだ。
「そんな自分を卑下するなよ。お前は結構美人なのに…」
と真面に返すカイン。
今日のメシ美味しいな?的なノリで返して良い会話ではないだろうとヒロは思った。
「分かってないのね。学生の間は一応身分が保証されているけれど、普通に暮らしている転生系がこの国でどれだけいると思ってるの?泥をすすり、今日食べる物にも困る人はゴロゴロいるわ。ミンスルの領主はまだ寛容だけどいつまで善意をひけらかしてくれるか分からない…」
腹の中から絞りだすような音だった。
ヒロもカインもここにいる同じ身分の人々は誰も反論できない。
ふと、彼女の細い腕に巻かれたブレスレットに目が行く。安物の紐だった。
気になったのはワンポイントに幼女が好きそうなクマのキャラクターがあしらわれていた事だ。それを見た瞬間、可愛いと思ってしまった。
そこにマミという女の生き方が見えた気がした。
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