第39話
「またやってるの?よく飽きないわね」
気だるそうに歩いてきたのはマミだ。
「何言ってるんだ。剣術は授業に含まれているだろ」
腕立て伏せを始めたカインが答えた。
「それって選択授業でしょう。受けるのは主にブレイヴ志望の学生ばかりじゃない」
「そうだ。だから俺たちはブレイブ志望…」
あっけらかんとした笑いを向けるカイン。
マミは唖然としたように口をポカンと開けた。
「バカね。転生系は“勇者”にはなれないのに意味ないじゃない!」
思いのほか大きな声の彼女に木の棒を持った少年たちはいたたまれないとばかりに顔を伏せる。
さすがにその様子にマミは“しまった”と思った。
「なれないにしても力は必要だ。転生系が住む地区はよく荒らされる。要は自衛のための訓練だよ」
黙って聞いていたヒロは淡々と言った。
「それむなしくない?カインもだけど、アンタはそこらの一般スフィル人より強いのに、ブレイヴにだって本当は憧れているんでしょう?」
「別に…俺は家族さえ守れればそれでいい…」
まるで石仏のように言うヒロ。
「定型文を聞いているみたい」
マミは不服そうに答えた。
定型文?つまり真面目って事だろう?
「それの何がいけないんだ?」
なぜマミが怒りを滲ませているのか分からない。
「本気?」
マミは心底信用なさそうに聞き返してくる。
「まあまあ、コイツはそういう奴だろ」
間に入ったのはカインだ。ヒロを親指で示しながらケラケラと笑っている。
息を漏らしたマミは無造作に髪をかきあげる。
その姿はとても妖艶だ。
だからこそ、疑問に思った。
「どうして先輩はこの学院に?」
「何よ。急に…」
そう不審そうな視線を向けるマミにどう言葉を続けるべきか迷う。
ヒロは一拍ほど沈黙した。
「う~ん。あえて言うなら青春してないから?」
「はあ?ますます意味わからない」
「だっていつも何かに怒ってるイメージしかない。特にスフィル人への憎悪みたいなものが駄々洩れっていうのか?」
言葉のチョイスがあっているのかは自信はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます