第18話

 ヒロ達のベストの胸についたエンブレム。

そこに縫い付けられるカワセミの羽は閉じている。これは後期部入学者に与えられるものだ。その入学資格は汚点を持つスフィル人に限定される。つまり準市民でありながら試験に合格した学生だけが身に着ける証なのだ。


「出自っつったって、いつもこれで通学してるだろ。お前だって…」

とポリポリ頭をかくカイン。


マミはあきれた様子で額に手を置いた。再び彼女が口を開く前に、

「違うんだ。出歩くのに最適な服を持っていないだけで…」

と恥ずかしそうに言うヒロ。とはいえあくまで本人の中での話であってマミには淡々と事務的に言葉を紡いでいるようにしか聞こえていない。


「そんな事はないぞ。俺もちゃんとした服ぐらい…」

カインは心外といった容姿で反論してくる。


おいおい、折角助け船を出したのにそれを台無しにしないでくれよとヒロは思った。


マミは両者を交互に見て、これ以上何を言っても無駄だと悟った。

思わず諦めを込めて息を最大限に吐き出す。


それと同時にこちらを不審そうに視線をチラチラと向けてくる観客に気づく。

だが彼らは何も言わずに去っていった。


「ほら、大丈夫だろ。制服着てなかったら今頃多分ボコボコにされてる」

とカインは愉快そうに笑った。


一般のスフィル人はヒロのような存在を蔑んでいるが、彼らを直接的に攻撃するのは恥だと考える人が多い。実に矛盾した心を秘めている。故に身分を明かしているヒロ達をこんな大勢の場所で陥れる者は少ないだろう。


頭の回転が鈍い割にはこういう悪意染みた物には謎の直観力を働かせるんだよなとヒロはカインを評価した。それを口に出すことはないが…。


マミは綺麗な顔をゆがませて舌打ちをした。

「本当に嫌な連中だわ。自分達を正義だとでも思ってるのかしら」

マミは彼らを心底軽蔑するように舌打ちをした。そして、

「大体、私達が何をしたっていうの?たまたま先祖に転生者がいるだけじゃないの!」

彼女の怒りが頂点に達したその時、


ドオッッン!――


爆音と振動がスタジアム内を包む。


「何!?」

3人の疑問の声が重なった。


「グラウンドの方だな」

ヒロは人をかぎ分けて音のする方へと向かう。


「マズイ!」


いたるところで悲鳴が上がる中、そこに映ったのものを目の当たりにしてヒロはとっさに飛び出した!

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