第17話

「ちょっと余計な事しないでよ!」

マミはまくしたてるようにカインを責め立てていた。

「助けてやっただろ!」とカインは言い返す。

「一人でも平気だったのよ」

鼻息荒く腕を組むマミ。どんどん声量が増していく。

「あの、少し声抑えた方が…」

とヒロは恐る恐る言えば、マミはキィッと猫が睨むような視線を向けてくる。

「アンタは先輩への礼儀をどうにかしなさい。敬語も使えないの?」


うわ~。八つ当たりもいいところだ。

こうなるから放っておこうと思ったんだ。


「おいおい、一歳しか違わないんだ。そんな大御所ぶるなよ」とカイン。

「はあ?一歳だろうが年上に違いはないのよ。ホントにバカなのね」

マミの怒りは底を知らないようだった。ヒロは何とかこの場の空気を変えたかった。

「すまない。育ちが悪いもので…」

あえておどけたように言う。

「こんな時だけ育ち悪いですアピールやめてよ。大体ね。環境なんてあたしらとそんなに変わらないじゃん!」とマミ。ヒロの思惑通りには進まない。

「まあ、確かに…」と言い負かされる次第である。

さらに、マミの言葉は続き、

「何よ。その気のない返事は!」

「普通に言ったつもりだが…」

マミの顔がさらに険しくなった。

「大体アンタはね。いっつもおんなじ表情なのよ。笑った事あるの?」

「頻繁に笑ってる方だと思っている」

「筋肉動いてない顔で言われても説得力ない!」

確かにヒロは昔から表情の変化が乏しいと指摘される事が多い。本人は楽しんでいるつもりでも、『不満そう』とか『怒ってる?』などの質問が飛び交ってくる。

いくら否定しても、信用してもらえないのでヒロ自身はすでにそういう性質なのだと諦めてしまった。


マミは盛大な溜息をつく。

「本当にもったいないわよね。見た目は二枚目なのに…」

「容姿の事をとやかく言うなんて心の狭い奴がいう言葉だぜ!」

とカインはあきれ顔で言った。

「いや、褒めてるんだけど」

マミはカインの言動に理解不能といった反応を見せる。

そして、急にヒロとカインの服装に目をやり、ますます怒りの形相になった。

「ちょっと、どうして制服なのよ!」

「なんかマズイか?」と呑気な返答をするカイン。

「おおっぴらに出自を公表するようなものじゃないの!」

マミは複雑そうに二人から視線をそらした。そして、

「だからアイツ、私達が準市民だって分かったのね」と続けた。

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