第13話

 マミ・シトラスは上機嫌だった。もちろん、折角手に入れたBB決勝戦のチケットを会場前でスラれた時は途方に暮れたが…。

それこそ、「私としたことが…」というノリで落ち込んだ。

だが、神は見放していなかった。ちょうどカモになりそうな男がいたのだ。

中年で、身なりのしっかりした男性。しかし、多少の劣情を抱えている。

そんな男の扱いはマミにはお手の物だった。けして手入れしているとは名ばかりのパサパサの髪だが、救い上げるだけのしぐさで男はくぎ付けになる。

 

 十代とは思えないほどのプロポーションと色気。

その特徴に自身が気づいたのは結構前だ。今ではもうすっかり使いこなせてしまう。

ここしばらくこの特技を使う気にはなれなかっが、試合が見たいという思いの方が勝ってしまった。

どこまでも身に染みてしまった性質に嫌気が指す。

一瞬、罪悪感が湧き上がってくるも頭の隅に追いやってしまった。

手慣れた手つきででブラウスのボタンをあけ、胸元を強調する。

そうして、ターゲットの男に近づけば彼は鼻をヒクヒクさせ、真っ赤な顔を彼女に近づけた。


本当に汚らわしい。けれど命綱でもある。

だからマミは透き通るようなほほ笑みをたたえるのだ。

さらにこの男はチケットをねだった対価は会場に入ってからでいいといった。

やらっれ損にはならないのは幸運だ。

さらに目の前の気色悪い男は会場の裏で、立ったままをご所望と来た。


「結構、変態ね…」とマミは感情のないつぶやきを発した。


早く済ませてしまおう。そうすれば心置きなく試合を楽しめる。


そう思っていたのに、

「アンタ何してんのよ!」

マミはカインを睨んだ。

その分厚い腕でねじり上げるのは脂肪厚いおっさんのブヨブヨの肉だ。

「大丈夫か?」

スーパースターよろしくと言ったいで立ちのカインに言葉が出ない。


これ、私助けられたのよね…。いや、そうよね。カインはそういう奴よね。


思わず、額をおさえて俯く。

「どうした。やっぱり何かされたのか!」

男を押さえつけながら、カインはマミの顔を覗き込んだ。

図体がでかいのに背中をまげたら辛いだろうに…。

マミは返答に困っていた。


これ、なんて説明する?大丈夫だって言って追い返すか…。

でもこの脳筋、理解力悪い割に頑固なのよね。


なんか、変な汗かいてきた。なんでこう、学院生相手だと口が回らないのよ。私!

と心の中で叫ぶマミ。


「おい、なんだお前!はっ!その制服…お前らハルモニアの…準学生だな!」

カインが殴る前に別の方向から鉄拳が落ちる。

目を丸くしてヒロを見つめるマミとカイン。

「自分で準つけるのはいいが、人に言われるとなんだかな…」

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