第11話
「深くは取らないでください。アリサ様にはソール様がいらっしゃると分かっておりますから」としおらしく返答するミア。だが、顔色が悪い事は隠しきれていない。
今ほど、自身の口の軽さを呪った日はないかもしれない。
ここに集っているのは少しでもアリサに気に入られようとしている者達ばかりである。ある者は親に言われ、ある者は自身の保身のために…。
しかし、アリサ本人はそんな水面下でのバトルを知る由もなく、
「はっ?」と間抜けな声をあげるだけであった。
私はいつからソールとそんな関係になったの?
記憶をたどってもあり得ない事実だった。
アリサは思わずグラウンドで走り回るソールに視線を移す。
確かに彼の見た目は非常に良い。
まるでおとぎ話に登場する王子様だ。そのためか女子人気は非常に高い。
この試合をスタンドで見守る女性陣の多くはソールを見つめている。
それはもうっとりした様子で…。アリサには理解できない。
「私とソールが何か?」とアリサは返した。
「皆、噂していますわ。お二人が並ぶと絵になられると…」
ああ、よかった。その程度の話題ならば特に問題視することはないなとアリサは思った。
「けれど、あの方、男爵でしょう。いくらキリュシュ家の縁戚関係にあるとはいえ格式が違いすぎますわよ」
反論したのはやはり、ミアをライバル視する少女だ。
「まだそんな時代錯誤な事をおっしゃってるんですの?今は貴族も平民も関係ありませんわよ。愛し合っているならなおさら…」
いや、少なくとも話題に上っている彼と恋をした覚えはない。
アリサの母の一族を辿るとソールの家にたどりつく。だから、昔から何度か顔を合わせた事はある。だが、アリサにとってはあくまで親戚の男の子なのだ。しかも記憶の中にいる彼のイメージは泣き虫な可愛い子である。
アリサのタイプはもっと屈強な男である。けして弱虫ではない。だからこの噂は非常に不愉快な物であった。ただし、学院入学から常に首席を守り続け、なおかつBBのレギュラーにまで上り詰めたソールを尊敬する気持ちがあるのは認める。
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