第6話

そうだ。この4年間、筋肉のすべてが悲鳴をあげ、泣いた。


何よりレギュラーになれず悔しがっている連中の顔がよみがえった。

このまま、泣きべそをかき続けたらアイツらに顔向けができない。


「一人が無理だというなら俺たちが助けるさ。勝負をかけよう」

そう言ったのは相手方選手を何人もかぎ分けて隣までやってきたセオだ。

相変わらずスポーツマンには似つかわしくない眼鏡姿の優等生風な彼だが、その言葉はなぜか胸に響く。


「僕も同意です!」とメルは可愛く頷いた。

「分かった。やってやるよ」


ソールは決意を込めて、前を向いた。仲間が後ろを支えてくれる。

そう思っただけで力が沸く。どこかでアイツも見ていてくれるはずだ!

迷いはなかった。


ソールは全力で走り出した。動き出した彼の前に立ちはだかる相手方選手たちは仲間達が阻止してくれる。まるでお膳立てしてくれているようだ。

今まで以上の一体感が支配していた。

なんでもできる気すらする。


視界の先に木の柱が出現した。

高く伸びるそれはセオが発動させたマギアによるものだ。


セオの奴、また腕を上げたな。遠慮なく使わせてもらうぜ!


 猛スピードで駆け上がっていく。

それでも目標とする最高得点ホログラムには届かない。

だが、足は止めない。助走をつけるように飛び上がったソールの足元に小さな風が張り付き、上へと押し上げる。ベナルの力だ。

ソールは深く息を吐き、胸に力を込めた。

腕に電流が走るようにビリビリとした感触が流れていく。

それは小さな子供がマジックアイテムだと呼ぶマギアが埋め込まれた道具の名称。

マギアメントと同義のものによる力だ。

赤い宝石が埋め込まれたそれはBBを始めた頃から愛用している。

まるで祈るような形で腕輪を高く掲げた。

そうすればソールの周りに赤いオーラが立ち込める。


「ファイヤー!」


ソールは高らかに叫んだ。

同時に拳に纏わりつく炎は宙を舞い、虹色に輝く球体へと一直線に駆け上る。

ソールが地上に降りた時には美しいオーロラのような光を放ちながらバラバラに砕け散る。

会場中から怒号のような歓声が響き渡った。

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