第2話
Bound Billetd――
通称“BB”と呼ばれるヴァウンド・ヴィレットはこの星でもっと愛されていると言っても過言ではないスポーツだ。
ルールは8対8に別れた二チームによって行われ、グラウンドに用意された障害物を破壊してゆくというシンプルなものである。
勝敗は破壊した数と指定されたポイントによって決定される。
しかし、人々を熱狂させるのは、妨害行為が許可されている点だ。
そこには肉弾戦も含まれる。故に“BB”は格闘技としての側面が大きい。
「選手入場です!まずは20年越しの優勝を狙うハルモニア学院だ!」
実況の声を合図にピッチに足を踏み入れたその瞬間、歓声が沸きあがった!
建てられて100年以上たつ石造りのスタジアムが地割れを起こしたのかと思った。
ローズメリィ帝国ではプロアマ老若男女問わずに楽しまれるBB。
帝国の全州にある上級学校生が戦う本大会は毎回開催される地方が異なる。
そして今年はミンスルでの開催である。
ミルフィーユのように何層にも積み重なった観客席は群衆に埋め尽くされている。
5万以上の目がソール達に向いている。そのどれもが友好的である。
当然だ。誰もが地元の学生である彼らを応援しているのだ。
ソールは対戦校の選手たちに視線を向けた。首都からやってきた優勝常連組だ。
どいつもこいつも筋肉隆々で顔面の圧が凄まじい。
この大会で名をあげた者の中にはプロとして活躍する者も多い。
奴らのギラつく瞳には闘志が張り付いていた。
未来のスターになるのだと自己暗示をかけているようだ。
だが、僕たちだって遊んできたわけではない!
ソールは美しく整われた芝生の感触を味わいながら持ち場についた。
身震いを隠すようにユニフォームに縫い付けられた学院のエンブレムをガシッと握りしめる。羽を広げたカワセミの刺繍がグシャリとブサイクにしわが寄る。
しかし、そんな事気にしない。キュッと固く結んだ唇を上に持ち上げて、対戦相手をにらみつけた。
ピッッ―――!
試合開始を告げるベルの音が鳴り響いた。
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