第78話 ラスボス戦
ラスボスの部屋の前で作戦会議を終えたみんなは、緊張することもなく準備を整えた。
残念ながら今回は俺は不参加だけど、全く心配してない。
みんなもここまで相当な場数を踏んできたからな。任せておいて大丈夫だろ。
「それじゃ、行くわよ。『
「私も。『
セリカとメアが第10界層の範囲防御魔法を放つ。『絶対防御』は全特殊効果耐性とVITとREGを強化する魔法で、『完全聖域』はさらに様々なバフを与える聖女専用魔法だ。
みんな100レベルを超えたから、第10階層魔法も普通に使えるようになったんだよ。
「じゃあ、開けるぜ」
「グラン、タイミングは任せるわ」
「よし。3・2・1・行くぞ!」
鋼鉄製の両開きの扉を押し開けると、正方形の玄室で俺たちを待ち構えていたのは5つ首の巨大な竜ティアマットだ。
レベルは180とみんなが戦って来たモンスターの中でも抜き出ている。だけどそれだけじゃくて。
「『
「『
グランとエリスがスキルを発動すると同時に、ティアマットがいきなりブレスを吐いた。しかも5本の首全部がだ。
炎と冷気と稲妻に毒と酸。どれも大ダメージ必須の強力なブレスで、完全に殺しに来てる。ゲームのときは初見でこれをやられて、俺のパーティーも全滅したんだよな。
「「『
ブレスを防いだグランとエリスのHPをセリカとメアが回復させる。
さあ、ここからはみんなのターンだ。
「『
カイが放ったのは複合属性の第10異界攻撃魔法だ。『
HPが回復したグランとエリスがスキルを発動したまま戦線を押し上げると、左右から飛び出したのはレイナ、ソフィア、ガルドの3人だ。
「あとは私たちに任せなさいよ!」
「うん。行って来るね!」
左右の壁際を駆け抜けてティアマットとの距離を一気に詰める。
「『
「『
膨大な光を放つレイナの2本の剣がティアマットのHPを一気に削る。ソフィアは高速で動き回ってティアマットの爪と牙を掻い潜りながら、急所である目を狙った連続攻撃だ。
「『
ガルドのスキルはシンプルなパワー系だけど、与えるダメージがハンパじゃない。グランとエリスも防御しながら攻撃して、カイとセリカも攻撃魔法を放つ。
ティアマットのHPがゴリゴリと削られていくけど、こいつは180レベル5体分のHPがあるからな。ブレスのクールタイムが終わるまで攻撃を耐え切った。
「みんな、いったん下がって!」
ティアマットの5つの首が咆哮を上げる。これはブレスを放つときの前動作だ。
だけどこのまま普通に攻撃を受けるほどみんなは甘くない。
「ほら、背中がガラ空きっすよ。『
「ラスボスなのに動きが甘いニャ。『
シーラが出現させた無数のナイフとライラの分身がティアマットの背後から攻撃する。
不意打ちに反応したせいで5つのブレスの方向が乱れる。これでダメージは半減だ。2人ともナイスアシストだな。
「みんな、次で決めるわよ。『聖光突破』!」
おかげでスキルを掛け直す余裕ができたし。回復魔法もエリスとグランに集中しなくて良いから、他のみんなのHPも回復させる。
ティアマットもHPが自動回復するけど
さっきと同じパターンの攻撃を繰り返して、みんなはティアマットのHPを削り切った。
エフェクトとともに消滅する巨大なドラゴン。ラスボスらしく大量の金貨とアイテムがドロップした。金貨はともかくアイテムの方はすで『始祖竜の遺跡』産を使ってるみんなにとって価値はないけど……
「アレク、やったわよ!」
レイナが俺のところには走って来てハイタッチする。みんなも嬉しそうだ。
「ああ。みんな頑張ったな。俺が出る幕なんてなかったよ」
『ビステルタの霊廟』を完全攻略した満足感だけで十分なんだよ。金やアイテムが欲しいから戦ってる訳じゃないし。まあ金はあった方が良いし、アイテムも売却して金に換えるけどな。
「やっぱり、アレクはフォローの準備をしてくれていたのね」
エリスが笑みを浮かべる。あ、余計なことを言ったな。
「いや、今のは言葉の綾だからな」
「ええ。解っているわよ」
誤魔化そうとしても、エリスには見透かされるな。なんか負けてる気がするけど、悪い気分じゃない。
「なんか2人で良い雰囲気なんだけど……アレク、私も頑張ったんだから褒めてよ」
「そうだな。ソフィアもプレイヤースキルが上がったな。攻撃のタイミングも正確さもバッチリだったよ」
「本当! アレク。エヘヘ……私、嬉しいよ!」
「私のことは……フン! あんたに訊くまでもないわね!」
「ああ、レイナ。さすがはレイナって感じの活躍だったな」
レイナはそっぽを向いてニンマリする。素直じゃないところもレイナらしいな。
まあ、こんな感じで『ビステルタの霊廟』の攻略は終わったけど――俺としては、ここからが始まりなんだよ。
みんながティアマットを余裕で倒せるようになるまで、リポップさせ捲るからな。
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