第60話 相良さんと


「はい?」


「どうやったんですか?どうやって回復するんですか?今出来ますか?必要な物はありますか?」


ぐいぐいこられた。


呆気に取られて返答できずに居たら


「あ、そうですね。ちょっと店閉めてきますね。少々お待ち下さい」


「えっ」


そう言うと相良さんは店員に指示を出しその足でクイナさんとイリスさんの元へ行った。


少し会話をし三人がこちらを見た。


相良さんに言いくるめられたらしい。


イリスさんが手を振って扉の方に行ってしまった。


クイナさんがそれを引き止めようとする。


イリスさんが笑ってクイナさんの後ろに回り込むと背中を押して扉から出て行ってしまった。


その際ひょこっと顔だけ出してこちらに向かって親指を見せてきた。


店員はバックヤードに戻ってしまった。


「お待たせしました」


「待ってないです」


ひえっ。 なんか怖い。


「で、どうやって魔力を回復したんですか?」


「ま……魔法で…………」


「どんな魔法ですか? 確か取り寄せですよね? 魔力を取り寄せられたんですか?」


「いえ……これです」


アイテムボックスから10,000円のカタログギフトを出した。


「カタログギフト……ですか?」


「カタログギフト……です」


「冗談?」


「真面目です」


そこで灯里とのやりとりの内容を説明した。


「……つまり日本に……戻る事で回復する……」


「そう言う事になります」


「日本に……」


信じられないと言った表情でカタログギフトを見つめる相良さん。


「使用しても良いですか?」


「あ、はい。大丈夫ですよ」


それでカタログギフトを開き申し込み用紙を見せつつ使い方を説明した。


「今行きますか?後で1人で行きますか?」


「出来れば一緒に行って説明貰えるかな?」


「分かりました」


実際に行きたい場所を聞きタブレットに申し込み番号を入力、名前の入力を済ませはいを押した。


「……!!」


「とまあこんな感じです」


お馴染みの説明を受けラウンジに移動する。


今回来た場所は老舗の温泉宿だ。


ラウンジからは木々に覆われた庭園が眺められた。


相良さんは呆けた様子で辺りを見渡している。


私はウェルカム玉コンニャクを咀嚼した。


「……本当に……日本……?」


「だと思います。灯里は家族と電話できました」


「そうか……。今は西暦聞いてもいいかな?」


「? 今は2022年です」


「20‥…22……年……」


「今電話しますか? 私タブレット弄って待ってますよ?」


相良さん用の玉コンニャクも貰ってたので差し出すと食べてくれた。


「美味しいな。いや……電話は大丈夫。そうか。2022年……」


「?」


片手で口元を覆う。何かを考えてるようだ。


「……大丈夫ですか?」


「いや……大丈夫。すまない」


訝しげに様子を窺うと相良さんは深く息を吐いた。


「温泉入ろう」


「そうですね」


考えたって分からないんだもの。


せっかく来たんだから温泉入ろう!


時間を決めて露天風呂に入りに行った。


私は連日温泉に入っていたので早めに上がりおみやげ処に来ていた。


ここの名産は何だろうな?


ふんふんと鼻歌交じりに店内をうろつく。地酒は欲しいな。米所だもんね。日本酒いっぱい!


お餅のお菓子が有る!美味しそう。え?お米も売ってる!


お漬物も美味しそう。お金。お金が欲しい。いっぱい買いたい。今日帰ったら下ろしに行こう。決定だ。


泣く泣く選別し地酒と名産のお餅のお菓子を購入した。


時間ギリギリまで温泉を堪能していた相良さんと合流し一緒に食事をして元の相良さんの店へと戻って来た。


「久しぶりに気持ち良かった」


椅子に腰掛け背もたれにもたれながらそう言う相良さん。


「それは良かったです」


「何冊かくれないかな?魔道具の代金の代わりに」


そんなに気に入ったのか?!


「良いですけど……肝心の魔力の事忘れてませんか?」


「!! そうだった!!」


そう言って空を見る相良さん。あれで魔力を確認してるのかな?


「ちなみに相良さんの魔法はなん何ですか?」


「内緒…………本当だ。回復してる……回復してる!!」


「お…おう。良かったですね」


「では…魔法の訓練始めようか」


「え?」


凄く良い笑顔で微笑まれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る