第61話 魔法の特訓1




その後相良さんのお店の地下に案内された。


「魔法の訓練はボコボコにしたい人がいるので大歓迎ですが……」


地下には冒険者ギルドよりも立派な訓練場があった。


広さはバレーコート2面分くらいありそう。


お店の広さと地下の広さがあってない気がするんだけどな?


目を擦ってもう一度よく見る。やっぱり広い。


「ここまで本格的なの必要ですか……」


「まだまだ足りないよ。魔法の練習に終わりはないからね」


心底残念そうに言う相良さん。


…あれ?


「そうなんですか」


「だか橋沼さんも早く上達して下さいね」


「えっ?」


……あれ?


「うーん。出来れば涼君も魔力回復して欲しいな」


そう呟く相良さん。


なんか雲行きが……。


「大丈夫。最初はブレスレット着けてて良いから」


そう言うと相良さんの周りに無数の火の玉が浮かんだ。


「な……何を」


「まずは防御だね」


言い終わるや否や私の真横を火の玉が通り過ぎた。


「うえっ!?」


「ブレスレットで防げる大きさだから安心して。さあ光魔法で防御の訓練だよ。どんどん行きますよ」


ニコニコ笑顔のまま次々に火の玉を放ってくる相良さん。


光魔法で防御ってどうやるの?!


あわわわと左右に走り回り火の玉から逃げる。


直撃しそうなのはブレスレットで防がれるけどあっつい!!


熱は防げないのね!!


「魔力を一箇所にフワッと集めてグワっと力を入れると使えますよ」


相良さんは微動だにせずに火の玉を作り出してはこちらに放っていた。


っ!……回復するんじゃなかったっ!!!!


シリウスさんよりも相良さんの方が怖いいい!!


どうすんの?! 防御ってどうすんの?! 言われたこと全然わからない!!


半泣きになりながらよくあるイメージで出す方法をやってみた。


手……手に魔力を……! って走りながらじゃ辛い!!


しばらく地下の練習場の隅から隅まで走り回り魔法を発動できないまま体力の限界が来て倒れ込んだ。


ぜーはーぜーはーと荒く息を吐いてるとそこに相良さんがゆっくり近づいて来た。


「流石に初回じゃ無理だったね。大丈夫毎日やれば出来るようになるよ」


これ……理解できる気しない……。


息切れのため反論出来ずに涙目で相良さんを見た。


「と言うか出来るようになってね。私も魔法色々試したいから。死なないでね」


出来なかったら死ぬの?!


サーっと顔から血の気が引いた。


「冗談と今日の練習はここまでにしようか」


冗談?! 何にが冗談?! 死ぬの? 死ぬのがだよね!!


カタカタと震えると相良さんは飲み物をくれた。


アイテムボックスからコップを渡してくれそれにお茶を注いでくれた。


それで気が緩み人心地つき壁際に行き腰を下ろすと相良さんが隣に腰を下ろした。


「本題ですが、カタログギフト、春子さんと商業ギルドのオーフェンさん、橋沼さんと本宮さん、私と涼君で一緒に使用しても良いですか?」


「良いですけど……オーフェンさん? も?」


渡り人だけで行っても良いんじゃない?あ、行けるかどうか確認するのか!


「こっちの人があっちの世界に行った話は聞かない。そんな中で行けるとバレたらどうなると思う?」


「……どうなるんですか?」


「まず間違いなくこの国の貴族……それどころか世界中からの問い合わせが殺到するだろう。それの対応も苦慮するはずだよ。爵位関係無く一斉に来るだろうし。どこから…返答すればいいかもきっと大変だ。一歩間違えたらその後が大変な事になるし。今までこちらの人、誰一人として行ったことがない場所に行くんだ。当然だね。



後……こちらの方が問題だ。間違いなくこちらの人と渡り人のバランスが崩れる。下手に公表すると争いになるよ」


え……。


「そうならない為にこっちの国の事情に詳しい調整役が必要だ。だからオーフェンさんを入れる」


「なぜオーフェンさん何ですか?」


「今の商業ギルドのギルマスに就任してから数十年の実績がある。貴族にも世情にも詳しい。橋沼さんのところにも変な人寄り付かないだろう? それ全部あの人が配慮してくれてるおかげだよ」


「数十年も!?」


「こちらに引き入れるには騙し打ちで実績を積む。連れて行ってさえしまえば騙されようが自ら行こうが行った事実に変わりはなくなる。そしたら渡り人とこっちの世界の人の関係悪化したら困るよね。必死で調整してくれるよ」


そんな配慮してくれてるのに騙し打ちは酷いんじゃ無いかな……。


「……オーフェンさん抜きでも良いんじゃないですか?」


相良さんの話を聞くと可哀想になる。連れて行かない方がいいんじゃないかと思える。


「そうなると後々バレたら桜が全部対応することになると思うよ」


「出来れば内密に……」


「出来ると思う? 魔法使うの我慢できる?」


「出来ない」


「じゃあどうする?」


「……オーフェンさんに丸投げする」


「それが一番だよ。餅は餅屋。本職に任せておけば良いと思おう」


「そうですね!」


私は難しい事を考えるのを止めた。


その頃商業ギルドではギルマスのオーフェンさんが盛大なクシャミをしたとかしないとか。

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