第二章

第59話 疑問


「相良さん!! 魔道具壊れた!!」


お店のドアを開けて開口一番に出た言葉がこれである。


「じゃあ新しい魔道具を用意するか。お金は今いくらある?」


貪る気満々の相良さんの言葉で思い出した。今手持ちない。


「商業ギルドで換金して出直します」


「冗談ですよ。お金は後からでいいです。今お持ちしますね」


そう言って相良さんは奥に引っ込んだ。


相良さんの冗談は本気か冗談か見分けが付かない。


そう思いながら前回と同じくアンティーク調の椅子に腰掛け待った。


ここに連れてきてくれたクイナさんとイリスさんは店内をぐるぐる見て回っている。


しばらくしてお待たせしましたと綺麗な小箱を持って相良さんが戻ってきた。


「これを渡す前にどうして壊れたか聞いてもいいかな?」


テーブルの上に小箱を置き対面に腰を下ろした相良さん。


冒険者ギルドでの経緯を説明した。


「……だとしたら同じ物では厳しいね」


腕組みをし考えるような仕草をする。


「王都に腕の良い魔道具師が居るからそちらでオーダーメイドで作ってもらったほうが良さそうだね」


Sランクの攻撃に耐えられる物はここには無いと言われてしまった。


「とりあえず臨時で前と同じ物を渡しておくよ。腕を」


腕を差し出し付けてくれた。


「あ、そう言えば……」


なにか聞くことがあったなと思いカタログギフトのことを思い出した。


「魔力を回復する魔道具ってあるんですか?」


「魔力を回復?」


「そうです。飲み薬でも魔道具でも何でも良いです」


「そうだな……魔力ポーションや魔力を貯めておく魔道具はあるよ」


魔力ポーション!! なんて異世界っぽい!


って違う違う。


「それは渡り人にも効くんですか?」


「あぁ、そう言うこと? 渡り人には効かないよ。……いや、正確には魔力ポーションは効かない。が魔道具は少しだけ効果ある」


「そうなんですか!!」


「うん。魔道具の方は回復させると言うより譲渡という感じかな? こちらの世界の人が込めた魔力を貰う感じだ。ただし等倍ではない。こちらの世界の人が魔力を100込めたとすると渡り人が回復出来る魔力は1だけ」


「その他に回復する方法は……」


「ない」


100対1って割合酷いな。


まぁ神様も魔力を使って欲しいからこっちに来させたんであってこっちの魔力使って回復されたんでは意味ないもんね。


って事は相良さんがこっちに来てから全回復した人居ないのか。


……居ない。


えっ。 私の魔法凄くない?


「……」


おもむろにつけて貰った魔道具を起動する。


「内緒話?」


「内緒話です」


俯いて唾を飲み込み深呼吸し顔を上げた。


「私……回復しました」


相良さんは呆けたような顔をした。


「……回復?」


「はい」


「魔力を?」


「魔力を」


眼鏡の位置を直しこちらを見た。


怖っ。


相良さんは険しい表情を浮かべ不気味に笑った。


こちらが引いてるのが分かったのか口元を手で覆った。


「この事を知っている人は?」


「……灯里です」


「本宮さんも回復したんですか?」


「…………はい」


何で尋問みたいに問われてるんだろう。


「私も回復したいです」

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