第4話 初めて出会う冒険者2



「「いいの?!」」


「ハンスさんはカップ麺ですか? 今手持ちのやつ並べるので選んでください。

クイナさんはとっておきのチョコ一緒に食べませんか!」


アイテムボックスからブルーシートを取り出して土の上に引き、その上に手持ちのカップ麺を置いていった。


……まずはヌードルにカップ焼きそば、カップラーメン、うどんにそば、カレー風味のラーメン、バリしゃきデカ盛り麺、豚骨風ラーメン、etc……。


最近災害多いから買い増しに買い増してたんだよね。 さあ選ぶが良い!


「……ぉお!」


そしてさっき一粒食べたチョコレートの箱をアイテムボックスから取り出す。


「ハンスさんはこれから選んでください。 クイナさんには私のとっておきを進呈します。 私はこのチョコの為にこっちに来ました!」


「えっ? チョコのために?」


どういうこと? 嘘でしょ? と困惑の表情を浮かべるクイナさん 。 

え? チョコの為ってそんなに引かれることなの? だってもう食べれないと思ったんだよ? 食べられる方法があるなら選ぶじゃないか。


誰に言われたわけでもないのに心の中で反論した。


私がそう思っていると、クイナさんの視線が目の前の箱に移ったので、我に返り箱を開けた。


「綺麗…」


うっとりする様に眺めるクイナさん。


「味はどういうのが好きですか? 濃厚な感じですか? 酸味が感じられる方がいいですか? ビターな感じがいいですか? それともリキュールが入ってる物ですか? アーモンドが入ってるのもありますよ!」


「え……そんなに種類あるの? どうしよう迷っちゃう」


オロオロさせてしまった。 


分かる……悩むよね……どれから食べようか迷うよね!!


「そんなに悩むなら……一つ食べちゃってますが、残りを貰って下さい」


私はまた取り寄せればいいしこれは食べてもらおう。

というか、こんなに真剣に悩んでる人ならばどれを食べても良いリアクションをくれるはず。


「こんな綺麗なの貰えないよ」


「是非とも食べてください。 本当に美味しいんですよ!! 私にクイナさんの共感を下さい!」


謎の私の迫力に圧されておずおずと受け取ってくれたクイナさん。


「じゃあ……お言葉に甘えるね。 ありがとう」


最初は綺麗な人だと思ってたけど、可愛い人だこの人。

うっとりとチョコレートを眺めるクイナさん、どれを食べようか凄く迷ってる。

綺麗な指先で、無難な四角いチョコレートを取り半分ほど噛んだ。


……それはリキュール入りだ。


中から出てくる液体に気付いたクイナさんは残り半分も口に含んだ。

私の方へ勢いよく振り向き目をカッと見開いた。

どうやら私と好みは合っていたようだ。


私は笑顔で頷くとクイナさんも無言で頷いた。


謎の以心伝心だ。

……初対面なのに。 それがちょっと面白くて笑ってしまった。


ハンスさんはデカ盛り麺を選んだみたいだ。

包みをはぐと中のスープともやしのビニールもとり焚き火で沸かしていたお湯を注いでいる。

見て分かるくらいウキウキしている。

ちゃんと後入れの味噌は蓋に乗せて温めている。 ……というか時間分かるのかな?

 

ハンスさんの行動を眺めていたら、ガサガサと草をかき分ける音が聞こえた。


「お? いい匂い。 あーハンス何食べようとしてんだー!」


「今回は私達が見つけられたみたいだね。 って早速渡り人から食料貰ってたのかい? 私達を待っててくれてもいいじゃないか?」


女性と男性が現れた。

女性は髪を一つ結びにしていてカップ麺を食べようとしているハンスさんにまとわりついた。


ハンスさんは、うるさい! これは俺が貰ったんだやらん! と死守している。


男性の方はハンスさんが途中だった片付けを再開し始めた。

クイナさんは見つかる前に自前の鞄にしまっていた。 後でゆっくり楽しむのだろう。


「……クイナさん紹介してもらえますか?」


「そうね。 ユリウス……イリス」


クイナさんは先程までの可愛らしい雰囲気から打って変わって綺麗な微笑みを浮かべ二人を手招きした。


「桜さん紹介するわね。 こちらの背が高い男性がユリウスでこちらの女性がイリスよ。 で……こちらが橋沼桜さん。 渡り人よ」


「「よろしく」」


「よろしくお願いします」


ユリウスさんはハンスさんと同じくらいの歳かな? いや……30‥…もしかして40代? あ……でも耳が長い! エルフかな?!

イリスさんは黒髪で髪を後ろに括っておりクイナさんより若そう? なんだか快活そうな人だな。


「ここに並べられてるカップ麺は君の? 私が見たことないものまであるんだけど! ケーキの絵柄の麺って何味?!」


ニコッと笑うイリスさん。 


……この人も食いしん坊だ。 

そのケーキの絵柄のはノリで買ったのです。 そしてノリで出しただけなのにそれに目が行っちゃったのか。

 

「良ければイリスさんもお一つどうぞ、だからハンスさんの狙うの止めてあげて下さい。

ユリウスさんも如何ですか?」


「私もいいのかい? じゃあそこにある緑色のゴツゴツしたものが描かれている麺を貰おうかな? 実に興味深い」


ゴーヤ味の焼きそば……なぜそれを選ぶ?! 


イリスさんはそのままショートケーキ味の焼きそばを食べるみたいだそっちもなぜそれを選ぶ?! 購入した私も私だけど。


「どうぞ」


ユリウスさんはテントを畳む手を止め焚き火に近づくと布を敷き腰を降ろした。









「絶妙な苦味だった」


「意外とクセになる甘さだった」


そう言ってのけたのはユリウスさんとイリスさんだ。

二人から一口ずつ貰ったけど普通の焼きそばを知っているわたしには理解出来ない味だった。

二人が食べている間にハンスさんとクイナさんが片付けをしてくれて今は街へ向かっている最中だ。

その途中にした会話によると今回の渡り人探しは数パーティーが参加していたらしい。

どのパーティーも例に漏れず食いしん坊なんだとか。

人柄は冒険者ギルドでちゃんと選ばれているらしい。

選ばれたいがために品行方正になるのか……品行方正の人が食いしん坊になるのかその辺どっちだろう。

ハンスさん達の様子を見ると中毒性は強そうだな。

なんにしても街まで安全に行けるならなんでもいいや。





その日の日暮れまでには街に着くことができた。

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