第5話 冒険者ギルド1
森を抜けると石垣で出来た壁が見えた。
その周りには街へ入る人たちが並んでいる。
私達もその列に並び、順番が来るとハンスさんたちが門番へ説明をしてくれて、街の中に入ることができた。
……人が沢山いる。
時刻は夕方。
日が傾き、そろそろ店仕舞いをする人達や、宿屋の客引き、飲み屋に向かう人々、家路へと帰る人々等街は活気に満ちていた。
「まずは冒険者ギルドに行くか」
そうハンスさんに声をかけられ我に帰る。
……噂の冒険者ギルド。
「はい!」
周りの様子に気を取られたらはぐれてしまう。 所見の場所で、しかも知り合いなどいないこの街で迷子になったら路頭に迷う自信がある。
置いていかれてたまるものかと力強く返事したら、置いていかないから大丈夫とクイナさん達に笑われた。
それからしばらく大通りを歩いたら、周りの建物に比べ一際大きな建物が見えて来た。
「大きいー……」
あんぐり口を開けて見上げる。
百人以上は余裕で入れそうな建物だ。
「桜さん?」
建物を見上げていたらクイナさんに声を掛けられそちらを見ると、他の人たちは扉をくぐり既にギルドの中に入っていた。
慌てて跡を追う。
「ギルマスは居るか?」
ハンスさんが受付に行き声を掛け、受付の人は今お呼びしますと言って席を外した。
私達は邪魔になるので列から外れ壁際でその様子を見ている。
「冒険者ギルドでっかいでしょ」
建物の中でも辺りの様子を伺っている私の様子が面白いのか、二ヒヒと笑うイリスさん。
「大きいですね。 それと人が……多い?」
ガヤガヤと賑やかな室内。 ……なんだか遠巻きに見られている感覚はある。 渡り人だからかな? それってわかる物なの?
「そりゃねえ……、この後お楽しみがあるし。 だから皆んな残ってるんだよ」
「……お楽しみ?」
「桜にも関係あるよ! ギルマスから話されるからね、あっ来た来た!」
先ほど出て行った受付の人と共にガタイの良い白髪の男性がやってき。 あの人がギルマスかな?
「今回もハンス達のパーティーだったか。 ……いつもいつもよく見つけるな」
「そりゃ美味しい物がかかってるからな」
呆れ顔のギルマスに対しいい笑顔で応えるハンスさん。
「それで……そこに居る子が渡り人か? お嬢さん名前は?」
お嬢さんって歳じゃないんだけどな……。
「初めまして、橋沼桜と言います」
心の中で苦笑いしそう答えた。
「……桜か、ちょっとこっちおいで」
カウンターの中へと手招きされた。
受付の人に何やら指示を出して来た方へと戻ろうとする。
「こちらからギルマスの所に行ってください」
カウンターの一部を上へ上げ道を作ってくれた。 クイナさん達に行っておいで、待っててあげるからと言われてギルマスの消えた扉へと歩いて行く。
扉を開けたのにギルマスの姿は無かった。 有るのは長い廊下だけ。 扉もいくつか有るし階段もある。 ……どこに行ったのかわからないじゃないか、来いと言われたのに居ないとは……どういうことだ、解せぬと思っていたら受付の人とは別のギルド職員の女性に案内された。
応接室と書かれた部屋の扉を開けると、机の向こうの席にギルマスが座っていた。
「来たか」
部屋に入ると扉が閉められた。
逆光で表情が見えない。 ……ちょっと怖い。
「とりあえずそこに座ってもらえるか?」
恐る恐る指定されたソファーに腰を下ろ……フカフカだ。
……何この座り心地。
「……気に入って貰えたみたいだな」
「……良い座り心地です」
恥ずかしい。 手でフカフカしちゃってた。
いつのまにか女性の職員が入って来ており、テーブルにお茶を置いて出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます