この手の話は、ややもするといやらしさやどろどろしさが先走ってしまいかねないものであるが、この作品は全体を通して、そのようなものを一切感じさせない。かと言って、いかにも青春ドラマです、と言いたげな恋愛が描かれているわけでもない。
何と申しましょうか・・・、
さっぱりとした、いやらしさを極限までこし取った、それでいて甘味のある真水のような物語とでも、言えましょう。
サラサラと、真水が体内に流れ込んで身体を浄化していくような、そんな感じの文体であり、それが作品全体を通じて読みやすく、一種の清涼剤のような物語として昇華されている源となっていると思料された。