第4話 彼女の親友

 二年生になりクラス替えも行われ、また新しい一年を迎えた。

 マキ先輩も卒業し、関係も無くなったので心機一転して彼女を作ろうと決心した。

 が、それからしばらくは仲間内で遊ぶことが多かった。大体は俺の家でギターを弾いたり喋ったりだったが、それはそれで楽しかった。


 ある日、いつものメンバーで遊んだ帰り、端中に呼び止められた。


「坂柳くんは今年もバンドやるの?」

「ん? 多分やらないかな」

「そうなんだ……」


(なんかいつもと雰囲気が違うな。ああ、告白かぁ……)

 

「あの、えっとね……」

「ねぇ、俺と付き合わない?」

「え? ホントに?」

「嘘でこんな事言わないよ」 

「ありがとう、嬉しい!」


 満面の笑みの端中に対して俺は心のなかでほくそ笑んだ。


 端中と付き合って数日、突然親友を紹介したいと言われた。断る理由も無いので快く承諾した。

 彼女とよく話したりしてた家の近くにある公園で待っててという事だったので待っていると、暫くして彼女と親友と言っていた人物が表れたが、その人物を見て驚いた。

 その人物は俺と同じ中学の松本羽海まつもとうみで色々噂が流れていたからだ。身長はそれほど高くないものの胸は大きく、短いスカートから伸びる脚はスラッとしていたからだろうか、大人と交際しているだとか援助交際しているだとかという噂だった。中学生の時分にそんな噂が流れるほど妖艶な雰囲気を纏っていた。

 その噂も相まって、端中と親友というのが信じられない。端中はかなりガードが固く、未だにキスすら出来ていない。


(っていうか、相変わらずエロい雰囲気だな)


「ごめん、お待たせ」

「大丈夫、ってか親友って松本だったんだな」

「知り合いなの? って同中だから当然か」

「いや、話した事はないかな」


 そう否定しながら松本を見る。


「うん、そうだね。でも私も坂柳くんの事は知ってたよ?」

「そうなの?」

「まぁね」


 挨拶もそこそこに三人でベンチに座る。端中から松本とどういう経緯で知り合ったか、どれ程仲が良いか等聞かされた。

 大方の話をし終わった後、松本が疑問を口にする。


「付き合ってるのに二人共なんで名字で呼んでるの?」

 

(まぁ、もっともな意見だな)


「だってさ。これからは伊織って呼ぶよ。俺の事は好きに呼んでいいよ」


 下の名前で呼ばれたのが恥ずかしかったのか、伊織の顔が真っ赤に染まる。


「じゃ、じゃあ私は今まで通りで」

「それじゃダメじゃん」

「だって恥ずかしいんだもん……」


(伊織がこんなに恥ずかしがり屋だとは……。去年の文化祭を仕切っていた人物とは思えないな)


「まぁ無理に呼ばせなくてもいいんじゃない? 伊織恥ずかしがり屋だから」

「それを分かってて何故指摘したんだよ」

「初々しい二人を少し揶揄からかいたくて」

「あっそ」

「ついでにわたしの事も羽海って呼んでいいから」


 この日からよく三人で遊ぶ様になり、一緒に試験勉強をするようになった。

 そんな中でも伊織とはデートを重ね、伊織も俺のことを名前で呼ぶ様になった。

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