第5話 秘密の関係
それから一週間が経ち、俺と伊織はようやく唇を重ねた。
家デートで借りてきた映画を見ている時に良い雰囲気になったので、流れでキスをした。
いつもならそこで止めるのだが、そろそろ我慢が出来なくなり伊織を押し倒した。そのままキスを続けつつ胸に触れる。
その瞬間、俺は突き飛ばされた。
意味がわからず呆然としながらも伊織を見ると、目に涙を滲ませていた。
「ごめん、こんなに嫌がるとは思わなくて」
「違うの! イヤとかじゃなくて……」
「ならなんで?」
「……まだそういう事するのが怖くて……。だからもう少し待って欲しい」
(こっちはさんざん待ったんだけどな。メンドクセェ)
「分かった。俺も我慢するから焦らなくていいよ」
「うん……ありがとう」
この事を切っ掛けに俺の気持ちは完全に伊織から離れた。
数日後、いつもの様に羽海も交えて公園で話していると、伊織が部活の先輩から呼び出されて羽海と二人きりになった。
(何気に羽海と二人きりは初めてだな)
「二人きりって初めてだな」
「だね~」
(男と二人きりなのに余裕だな。親友の彼氏だからか? この機会に噂について訊いてみるか)
「そういえば中学の時の噂って本当なの?」
「気になる?」
「まぁ、気にならないって言ったら嘘になるかな」
「ん~、じゃあ特別に教えてあげるから耳かして」
(耳元で話さなきゃいけないくらいの話って事は、やっぱりあの噂は本当だったのか)
なんて考えていたら、予想外の言葉が耳に入った。
『わたし、まだ処女だよ』
思わず仰け反り羽海を見ると、耳まで真っ赤にしていた。
(この反応はマジで処女なのか?)
「マジで?」
「……うん」
驚きを隠せないでいると、羽海が拗ねた様に「そんなに驚かなくてもいいじゃん!」と言いながら脇腹をツンツンしてきた。
「だったら何で否定しなかったの?」
「否定してたよ! でも誰も信じてくれなくて……」
まぁあんなに妖艶な雰囲気纏ってたら否定しても信じて貰えないかもしれない。現に本当に処女なのか俺も半信半疑だ。
「そんな事よりもさ、聞きたい事あるんだけどいい?」
「なに?」
「聖人ってもう初体験したの?」
「まぁ、一応」
「ふ~ん、そうなんだ」
「ああ」
「「…………」」
(気まず! なんで急に黙っちゃうの? もしかしてマキ先輩の事知ってたとかか?)
「わたしも……経験したいなぁ」
「好きな奴とか居ないの?」
「中学の時から好きな人は居るんだよね~」
「告ったりしないの?」
「その人彼女居るから告ったりは出来ないかな~」
「そっかぁ」
(中学の時からって事は俺も知ってる奴なのだろうか? それにしても中学から片思いなんて俺みたいだな)
「告白して奪っちゃえば? 中学の時から好きなんでしょ?」
「…………」
羽海は言葉を返さず、俯いて黙り込んでしまった。
「ごめん、無責任な事言って」
「ホントだよ。だから……責任取って」
「責任って、何すればいい?」
そう問いかけると、羽海は俺の手を掴んで自分の胸に押し当てた。
「わたしとエッチして」
そして羽海は追い打ちをするかの如く、とろけた瞳を向けて囁く。
「伊織はシてくれないんでしょ? わたしならイイよ?」
その言葉が切っ掛けで、俺の理性は完全に壊れた。
そして俺達は伊織に内緒で付き合い始めた。
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