第3話 眠っているような顔をして
病院の夜間受付で、母さんの病室を聞いて向かった。
病室に入ると、狭い病室の中、オロオロ歩き回ってる父さんがいた。
「母さんは、大丈夫?」
「こうして見ると、全く外傷が無く見えるけど、後頭部を強く打っているんだ」
チューブが繋がれているが、交通事故に遭った姿に見えない、ただの寝顔のような母さん。
本当に、交通事故に遭ったのだろうか?
そんなの信じられないくらいに、今にも、大アクビして起きそうに見える。
「意識不明って、もちろん、意識は戻るんだよね?」
「医者から聞いた話では......見込みは薄いみたいなんだ......」
ガクガクと震えながら、何とか言った父さん。
この目の前の現実を受け入れ難いって気持ちに、僕は初めてそうなった。
だって、今朝は、あんなに元気でいつも通り、煩かったんだよ!
それが、夜には、こんな姿になっているなんて......
こんなただ眠っているだけに見えるのに、その眠りは、この先ずっと続くかも知れないなんて、誰が、そんな事、信じられる?
あのウザイくらいの小言を聞けなくなる日が、こんないきなり訪れるなんて、誰が想像出来た?
そんな事なら、今朝、ちゃんと「行って来ます」って言っていたら良かった。
もうあんなやりとりは二度と出来ないかも知れないなんて......
僕、母さんに、まだ親孝行した事無かったんだよ!
「ちゃんと勉強して、立派な社会人になって、幸せに結婚してくれるのが、一番の親孝行だよ。欲を言えば、孫の顔も見たいけどね」
なんて、ふざけたように言っていた母さん。
その母さんの希望を1つも叶える事無く、母さんは、僕の事をもう何も認識しなくなってしまったなんて。
そんなのイヤだよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます