第2話 落ちた弁当

 今日は、なんかついてなかったよ。


 昼休み、弁当食べようとしたら、2人でふざけながら机の横を通っていた生徒にぶつかって、落とされたんだ。

 まだ1口2口しか食べてなかった弁当をだよ!

 頭に来たけど、謝って拾うの手伝ってくれたし、ガマンした。


 けど、さすがにお腹空いたな。

 今日の夜ご飯、何だろう?

 僕の好きなおかずだったらいいな!


 野球部の部活が終わって帰ると、いつも、夕食のおかずの匂いが、玄関開ける前から届いて来る。

 その匂いで、僕は、夕食を当てるのが得意なんだ。

 十中八九当てられる!

 今日は、昼に弁当食べ損ねて、お腹ペッコペコだったから、当然、当てる気満々でいた。


 なのにさ、玄関開けても、何の匂いもして来なかったんだ。


 匂いどころか、家の明かりもついてなかった。

 

 どういう事......?


 母さんは?


 何か用事が出来て、夕食を早目に作って、出かけたとか?

 そんな話は聞いてなかった。

 家の明かりをつけても、夕食を準備したという形跡1つ無い。

 

 その時、家の電話が鳴った。

 

「ああ、逸、戻って来ていたのか?学校だったら、スマホにかけても無駄だと思って、家の留守電に入れようとしていた」


 父さんからだった。

 父さんが、どうして、家の電話に留守電を残そうとしていたんだ?

 それより、母さんは......?


 「何か有ったの?」


 親戚が亡くなって、手伝いに出かけたとかっていう事は、今まで2回くらい有ったから、それだろうか?

 だったら、母さんが置手紙くらい残してくれてもいいのに。

 今朝の事、もしかして、まだ怒ってるのかな?

 大人げないな。

 

「母さんが、買い物帰りに交通事故に遭って意識不明なんだ」


 父さんの言葉の意味が、すぐには掴めなかった。

 

 交通事故......意識不明......

 母さんが......!


 親戚ではなく、意識不明なのは、僕の母さんなんだ!

 

「逸、ちゃんと聞いてるか、市立病院にいるから、早く来てくれ!」


 市立病院だったら、自転車ですぐだ。

 僕は家に戻って5分もしないうちに、着替えず、制服のまま病院に向かった。

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