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カシャッ!

カシャカシャッ!

凄まじい勢いの眩いシャッターの点滅に目がどうにかなってしまいそうになるが、凛々しい態度であらねばと思える栄誉あるシャッターなのだから、耐え抜かなければならない。

大きな一室に立ち並ぶ記者達は大小様々なカメラを用いり、使い古されたメモ帳にペンを走らせる。

そのカメラマンや記者達の質問は、なんとしてでも完璧な原稿を作るために必死で、やはりどこか鼻が高くなってしまう。

「~~~~について詳しく!」

「では教授! この通説はどう…………」

なんともまぁ響きのいい『教授』という単語。

何度も何度も、その達成感のようなものを噛みしめ……。

「皇輝君? 君は何をしてるのかな?」

「えっ。い、いや~ぁ?」

「まさか…、君のことを呼ばれているとでも? ……准教授君?」

嘲笑を向けてくる男。無論、この男は俺の師であり第二の父である夢籐だ。

今開かれている会見は、夢籐の歴史的発見の栄誉と科学進歩の前進、そして人の道に新しい可能性を見出した本当に凄い会見。

科学者として誇れる事実を、世に突きつけることができた会見なのだ。

ここだけの話、夢籐がこうして表向きに発表ができるような研究を完遂した裏には、俺のおかげともいえる出来事があったのだ。

それは俺が最後にみくに会った…、少し後のことだった。


『なぁ…、夢籐』

『なんだい? 息子よ』

『実はな……、って息子呼びは止めろ!』

『なに顔を赤くしてんのさ。あっ…、もしかして……?』

『あ~~もう! 茶化すな! 俺からの要件は一つだけだ! …一緒にやってほしいことがある』

『…僕の力がいるのかい?』

『あぁ。そうなんだ。端的に言って、俺だけじゃ成せそうにない』

夢籐は手にしていたコーヒーを飲み干すと、空になったカップを俺の方へと向ける。

その顔に何か企むような笑みを浮かべながら…、

『君の研究に…、助力しようじゃないか』

こう答えるのだった。


「まぁ~、それにしても。君にいっぱい食わされるとは思っていなかったけどね~」

会見を終え、いつもの研究室に向かう帰り道。

何故かクレープを片手に持っている夢籐は、口の端にクリームを付けながら口を開く。

「いつからそんな子に…」

「俺は夢籐の研究こそ、世に広まるべきだって思っただけだ。変な考えはやめろ」

実は、夢籐の研究のほとんどが表立って発表できるものではない。

夢とは、人間の深層心理の表れだったりする。

それを映像化したりするリスクは大きい。俺が被検体になっていた時も百パーセントの安全は保障されていなかった。

だが、それを差し引いても尚、夢籐の研究は素晴らしいものだ。

称賛されるべき研究成果を研究室の本棚にしまっておくのは惜しい。

だから、あのユメユメ映像化マシーンを安全運転できるように改造、ついでに歴史に残るであろう夢籐の秘蔵の研究を数個、公にしたのだ。

「俺は夢籐が凄い人間だって知ってる。きっと…、俺の父さんよりも。だから胸張って研究に没頭しようぜ。これからも俺達二人で」

今回の発表で国から正式に研究の認可が下りたらしく、研究費も出ることに。

ゆくゆくはこの、ユメユメ映像化マシーンを量産……、なんてことも。

「君からこの話を持ち出してきた時は、こうなるなんて思ってもみなかったけどね…。まぁ感謝しているよ。初めて賞を受けた時もそうだったけど、僕は日陰の人間であり続けると思っていたからね」

「感謝してるのは俺の方だ。夢籐は覚えてないだろうけど…、夢籐のその力と頭脳に助かったからな」

「時々君の口から、もう一人の僕の話を聞くんだけど…、それも調べるに値する内容かい?」

「うんにゃ。価値は俺だけにあるものなんだよ」

俺だけが知ってる、二度と忘れない大事な記憶。

その全てを語ることはもうないだろう…。

みくは消えたりしていないのだから。

ずっと傍で見守ってくれている…。


なぁ? そうなんだろ…? 


晴天の空に誰へともなく投げかけてみる。

そんな俺の問いに応えるように、首に下げている指輪が輝くのだった。

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