第三話 占いの街にて
大きな大きな池に映る自らの姿はおどろおどろしい骸骨であり、それを見て悲しくなる今日。
太陽に照らされて輝く池の上に真っ赤な木製の橋がかけられている。この世界に5つある大国の中の一つである和の国の中の大きな街、通称占いの街と呼ばれる場所である。
狐の面をつけ巫女の服を着た隣で歩く女性は無口であり、私はただ黙々とその横を歩く。
「あなたが来ることは分かっていました。ついてきてください」
ビャクヤと名乗る女性に何をされたのかは分からないが、いきなりと言って差支えなきほどに突然、私はこの場所に立っていた。そして、その突然この場所に来た私をまるでそれが当然のことであるかの如く誘導するこの狐面の女性が何者かも分からないが、私はそのあとをついていく。
和の国は私を殺した正義の国ではなく、私がこやつらと争う理由はない。最も従う理由もないのだが、何分私は復活したばかりであり、なにも情報を持たない。今がいつなのかすらも分からない。ならば、他者に従い、少なくとも情報を得たいのだ。
やみくもに池の中にかかる橋を進み続けると、その池の丁度真ん中に厳かな社が現れた。
「お入りください」
その狐面の巫女はそう言い、私は一室程の大きさであろうその社に入り込んだ。そこには胡坐をかいて座る一人の老女と、その横に立つこれまた狐面の巫女が存在していた。
「よく来たな、シャマラよ」
その老女はしゃがれた声でそう告げた。
「わしが分かるか?」
老女のその声に私は頷く。
「お前こそ姿の変わったこの私が分かるのか?」
「分かるよ、分かる。遥かなる時が流れ、貴様の姿がいくら変わろうとも、魂の形は変わらぬ。貴様は昔のままだ」
ああ、だろうな。私は理解する。この老女は昔からそうだ。人を外見でなど見ていない。この老女は昔、今はもはや曲がり切ったその背中がしゃんと伸びていたころより、人を魂で判断する者だった。
「時が経ったのだな」
老女は私の声に呼応するようにため息を吐いた。
「貴様が死んでからもはや三十年も経った。よもや貴様を覚えている者も少なくなった。時代は流れるものじゃ」
「世界は変わったのか?」
「ああ、だいぶ変わった。貴様の国である死の国は遥か昔に滅んだぞ、死の国の国王シャマラよ」
ああ、そうかい。そうなのだろうと想定していた事実が私の顔をぶん殴るかのような衝撃を与えてくる。
「正義の国にやられたのか?」
老女はゆっくりと頷く。
「ああ、貴様が正義の国の国王に敗れた後、統率を失った死の国はすぐに正義の国の大群により、焼け野原となった」
床に敷かれている畳を私は握った。怒りに身をまかせるように床にある畳をえぐり取った。
「殺してやる」
そう呟いた。
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