「私より弱い人とは結婚しない」と言っていた女騎士、最強すぎて自分より強い相手がいなくなり、こうなったら自分で育てようと剣術講師になったら生徒がみんな女の子だった件
第3話 三年前から結婚したいって思ってたって重くない?
第3話 三年前から結婚したいって思ってたって重くない?
「えっと、ごめん。テレンシアさん、だっけ?」
「リンスでいいです」
「じゃあ、リンスさん。もう一回言ってくれる?」
「私と結婚してください」
「微妙に省いてない!?」
もはやただのプロポーズだった。
私は思わず、周囲を慌てて確認する。
幸い、近くを歩く生徒はいなかった。
目立たないように、私はリンスさんを人目の付かない場所まで誘導する。
「こ、こんなところに連れ込んで、どうするんですか?」
「いや、何もしないわよ! てか、色々とどういうこと? え、あなたが私と結婚するって……?」
「だって、アリシア先生は答えてくれたじゃないですか。『私より強い人がいれば結婚してもいい』って。なら、私がアリシア先生より強いことを証明したら、結婚してくれるってことですよね?」
「そ……」
そうきたかー! と思わず叫びそうになるのをこらえ、私は頭の中で考えを巡らせる。
つまり、彼女は今まで私に対し決闘を挑んできた人々と何ら変わりはない。
私を倒して、私と結婚したいと思っている恋する乙女、というだけだ。
――いや、この数年の間に女の子から決闘を申し込まれるのは初めてだけれど。
「受けてくれますか?」
「うん――」
「ありがとうございます! 結婚を受けてくれて!」
「早い! 展開が早いわよ! 『うん、ちょっと待ってね』って言おうとしたの! 肯定の『うん』じゃないわ!」
「私とは遊びだったってことですか……?」
「あなたが私で遊ぼうとしてるんじゃないでしょうね……!?」
「私は真剣です。本気で、私はアリシア先生と結婚したいと思っています」
「……どうしてよ? 私達、初対面よね?」
さすがに、理由は聞いておかなければならないだろう。
「……実は、初対面じゃないんです」
「えっ、そうなの?」
「先生はきっと、覚えてないと思うんですけど、あれは三年前……街道に魔物が現れた時のことです」
街道にはそこそこ魔物が現れるので、そう言われても思い出せない。
「私が乗っていた馬車が襲われた時、颯爽と助けてくださったのがアリシア先生でした……。その日以来、アリシア先生のことをずっと考えていて、だから騎士を目指したんです。本当は、騎士になってから告白しようと思っていたんですけど、目の前に本物が現れたら……もう運命!」
「な、なるほどぉ」
テンションがやばい。
つまり、私が助けたことのある少女であり、彼女はその時から私のことが好きで、騎士になったというわけだ。……『憧れ』を通り越して『結婚したい』というのは、そこそこ『重い』のではないだろうか。
いや、それが決して悪いことだと言うつもりはない。
けれど、普通に考えたら彼女は私と結婚するために騎士になりたい、と言っているわけで――いや、普通に重いわ。
しっかり三年間、この日までその意志を曲げずにやってきているわけで。
「……一先ず、事情は分かったわ。でも、生徒からの決闘を受けるわけにはいかないの」
「それは負けを認めたってことでいいですね?」
「全然よくないわ」
「でも、決闘してもらえないっておかしいです。先生に勝ったら結婚できるのに、勝負すらさせてもらえないなんて……!」
ちょっと涙目になったリンスさんに、私は慌ててしまう。
今まで決闘を断ったことはないが、さすがに生徒と決闘するのはまずい気がする。
いや、でも模擬試合というケースならいけるか……?
それとも、この場でサクっと終わらせてしまうか。
要するに、私が決闘で勝てばいいわけで――それなら、すぐにやれるはず。
「……分かったわ。その決闘、受けるわ」
「! ありがとうございます!」
「ただし、決闘は今すぐこの場で、模造武器で行いましょう」
「あっ、その点は大丈夫です。さっき、模擬試合をしたいって申請したら通りましたので」
「え?」
「私は正々堂々、アリシア先生と戦って結婚を申し込みますから!」
何この子、めっちゃ準備いい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます