刹那infinite∞

橙 suzukake

刹那infinite∞




今日も、この女を抱いてしまった。

しかし、今回、誘ってきたのは、女の方だ。

これで、俺は、若干、救われた気持になる。

“俺を必要” と思ってくれているのが嬉しいからだ。

もちろん、誰でもいいわけじゃない。

俺にだって、好みはある。

俺を必要と思ってくれる人がであってほしい、

と思う人からなら、それに応えようと思う。

そこには、節操も無ければ、倫理も無い。

君が強く俺を思ってくれて、俺も君を強く思ってくれさえすれば、

それで成立する関係だ。


抱いた後には、なぜか、いつも、サザンの曲の歌詞を思い出す。

「終わぁらない彼と寝てるぅ~ナイターイム」

まあ、俺の場合、彼ではなくて、彼女なわけだが。

シミが点在している決して綺麗とは言えないその薄い背中を眺めながら、

俺はこの歌詞を一回だけ頭の中で口ずさむ。

脳内で口ずさんでおきながら、俺は君の背中に躰をぴったりと付け、

両手を君の躰に巻き付けて引き寄せる。

君は、俺が巻いた腕に手を充てがう。


もう決して硬いとは言えないモノと、

決して柔らかいとは言えない物腰をもつ中年の俺の、

何処に必要とされる部分があるのか考えるときがある。

愚痴の聞き役か?

大事な案件の相談役か?

手持無沙汰の時間の埋め合わせ役か?

誰にも相手にされない躰が求める欲の埋め役か?

ささくれた心に塗る軟膏か?

いや、いつだって、考えても正解は出ない。

君に聞いたって、本当の事は答えてくれなさそうな気もする。

そんなことを伺うことで、

君がもう二度と俺を求めてくれなくなるような気もする。


君の乳首を撫でながらそこまで考えを巡らせると、

「くすぐったい」と言いながら君が俺の手を払うか、

君が何も言わなければ、

やる気だけはあるけど硬さが不十分なモノをもう一度、

君の中に入れようと試みるだけだ。



そう、唯一、確かなことはこれだろう。


刹那は、60ぶんの1秒の短さ。

その刹那の連続を永遠にしたいと思っている阿呆が、俺だ。





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刹那infinite∞ 橙 suzukake @daidai1112

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