妄想部屋

第2話モンスター

 俺は不気味かもしれない


 自分で言うのもなんだけど

 身長も高い

 顔立ちも整っている

 細身の体にしっかりと付いてる筋肉

 25歳の割に平均より高い収入

 オシャレも好きでスーツもこだわる

 私服もこだわり

 モデルに誘われた事も度々

 穏やかな話し方

 綺麗好き

 彼女がいた事が無いと言っても

 信じてもらえない

 昔の写真を見せても

 いつの時代も人から見たらモテる人になるだろう。

 確かにずっとモテてきた

 モテなかった事などない

 バレンタインにチョコが無い歳など中学から一度もない

 だけど

 彼女は一度もできた事はないし

 童貞だ

 ただ1人だけ好きな人がいる


 俺は毎日その子との妄想の中で恋愛をしている 


 その子に買った渡せないプレゼントがクローゼットに入ったまま

 部屋のスリッパはその子用にふわふわのスリッパを用意してある。ピケのパジャマも

 あの子が似合いそうな白を、上下セットで

 冬用と夏用

 チーズが好きなあの子の為にいつも、冷蔵庫にはチーズを、寒がりのあの子の為に加湿器を2つ

 壁には大好きなクリオネの写真をいくつか

 あの子に似てる、天使のクリオネ

 ライトアップして飾ってある

 俺はこの妄想に溢れた部屋にいるのが幸せだ

 ベッドサイドには綺麗なガラスのお皿

 その上にはシャープペンが一本、あの子のだ

 異常だとは自分で分かっている。


 数回取り乱し部屋をぐちゃぐちゃにした

 自分を殴り、鏡で自分の姿を見ると

 モンスターになったように思える


 あまりにも部屋で暴れる自分が怖くなり

 心療内科に行こうかと考えたが、

 なぜ、こうなったのか、話すのが嫌で

 医者を頼る事は無かった。

 会社に入りラグビーに誘われて

 救われた。

 心の中の固まりを押し出すように

 ラグビーにぶつけた。

 先輩たちが、俺を気にしてくれている。

 ありがたいが、話す気にはなれなくて

 なんとなく、流してきている。

 それでも、気にかけてくれる。先輩にいつか、話すつもりだ


 不気味な俺をぶちまけて、引かれないか、不安で仕方ない。だけど、誰かに話さないと俺は本当にモンスターになってしまう。

 モンスターにならないように。

 落ち着いて、落ち着いて。今夜もベッドに入ろう。

そして、妄想する。


ただいま。シャワー浴びてくるね

コーヒー飲む?

2つコーヒーを淹れる

寒くない?

ご飯たべた?

髪乾かそうか?風邪ひくよ


毎日の1人芝居

大人のおままごと

これが幸せだ。



 ブー、とバイブ音がして

 LINEを開いた


 さっきはどうもハート

 みさきだよ。

 佑月くん今度ご飯連れてって。

 お願い。



 俺はモンスターなりたく無い普通にしたい。

おままごとをしながらも

異常だとは分かってます。


 ご飯に行って見ようと思って返信した


 こんばんは

 今週末どうですか?

 境駅の南口で8時

 どうかな?


よし、普通の25歳の男に切り替えスイッチ


 すぐ返信がきた。


 嬉しい

 8時ね待ってます。

 楽しみだよ。

 早く佑月くんに会いたい。


 心に冷たい風が吹いた気がしたけど

 気にしない事にした。


 次の日


 先輩にみさきちゃんとご飯に行きますと話すと、


 ん?俺もみさきちゃんをご飯誘って約束してるぞ?


 するともう1人先輩がニヤニヤしながら

 みさきちゃんは2人同時に行くつもりだな?

 まあ、2人ともカッコいいしな。

 2人彼女無し!となったら選べないよな

 ご飯を食べて見て!どちらと気が合うのか?

 そんなとこかな?



 あー、、

 先輩、俺みさきちゃんにあまり興味ないんで

 先輩どうぞ。


 そう言うと


 おいおい。佑月が女とご飯いくなんて、かなりレアだぞ!

 俺は、ほら俺でご飯いくけど。

 佑月一回ご飯行ってみろよ。

 俺はみさきちゃん気に入ってるけど

 佑月は興味ないんだろ?

 なら

 ご飯だけリハビリだと思って行って来い!!


 いや、でも先輩気に入ってるなら

 なおさら

 他の子誘いますよ!


 バカか?佑月は誘わないだろ

 俺だってな、モテるんだぞ、

 みさきちゃんは俺に落ちるから

 心配するな。

 ご飯だけ行って!リハビリしろ!!

 命令な。


 なんか、すいません

 変な気を使わせて、、


 先輩はさりげなくだけど、俺の女事情を気にしている。

 面倒見のいい人達だ。

 ちゃんとは話ししないとな。

 俺からも、先輩に歩みよらないと

 本当にモンスターになりそうだ。


 ご飯に行こう、普通に楽しく

 リハビリか、

 確かにリハビリは必要だな。

 女の子にリハビリの為なんて悪いけど

 25歳の男らしく

 楽しく過ごそう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る