#06
ロジオンが
ロジオンは地面に横たわった昔の恋人の亡骸を胸に抱えて立ち上がった。
肩を落としているようにも、僕には見えた。
悲しい背中だと思った。
「お前を街まで送っていくのは、ジルを埋葬してからでもいいか?」
ロジオンが僕の方を振り返った。
僕は黙って頷くよりほかなかった。
埋葬地は小高い丘の上にあった。
墓標はない。
こんもりと土が盛られた
ロジオンはジルを埋めた場所にしゃがんで両手を合わせていた。
僕は、死者の弔いの儀式というものをこの時初めて見た。
「これで5体目なんだぜ」
僕のほうを振り返るでもなく、ロジオンはジルを埋葬した場所を撫でながら、呟いた。
「ここには脳の潰れたジルの遺体が5体埋まってるんだ」
「ジルは5回も死んだの?」
「俺が5回殺した」
どういう返事をすればいいのか分からなかった。
「死んでも死んでも蘇っては、俺を
結婚したっていうのに、未練がましいのはあっちのほうだっつーの」
ロジオンが立ち上がった。
「忘れられる分けないだろ?俺の方はいい加減、忘れたいのにさ。
いっそのこと、俺がジルに殺されてやれば、忘れられるのになと思ったりもする」
「それはダメだよ」
ロジオンが死ぬのは悲しいと、なぜか思った。
「違いねぇ!」
ロジオンが僕の方を振り向いて笑った。
「ジルは何度でも蘇るけど、俺の一生は一度きりだからな」
――ああ。
僕は気がついた。
――ロジオンが死ぬのが悲しいのは、一度死んだら、もう二度と会えないからなんだ。
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