第3話 人間のゴミ捨て

火曜、金曜はゴミの日。

人間のおこぼれを昔はよくいただいたが。

最近は手が出せない。大きな小屋にゴミを閉じ込めてしまうから。


ワシの一日は団地の見回りから始まる。

以前は、小学生の群れがあちらこちらに見えたものだが。

今は、朝出かける人間の方が少数になったようだ。



おぉ!めずらしく階段の下にゴミ袋が転がっている。

きれいに袋は結ばれているが何かうまそうな匂いがする。


警戒しつつも距離をつめようとしたとき、

上から老婆がよろよろと現れた。

体の動きは、がくがくしている。

人間でいうところの脳梗塞の後遺症なのか。

ゴミ袋をもって階段を降りることができなかったのだろう。

先にゴミ袋を投げおろし、自分は手すりをつかみ一歩一歩ゆっくり降りてくる。


道路を渡るときなど見ているこちらがはらはらする。絶妙にバランスをとってゴミ捨て場へ進んでいく。

彼女はいつまで自分でゴミを捨てに行けるのだろうか。

そんな老婆の横を若い人間が小走りで通り過ぎ、ゴミ捨て場の戸を開けた。

「ゴゴゴゴゴ」

ゴミ捨て場の扉は重い。だから猫には開けられない。


その若者は老婆を手伝おうか否か迷っているようだった。

結局、手を出さず、老婆がやってくるのを待っていた。


ゴミを家にため込まないことだけでなく、自分で捨てることもその老婆には大切なことなのだろうか。


そんなことを考えながら眺めていたら、老婆はゴミ袋をゴミ捨て場の小屋に入れてしまった。

そして、若者が重い扉を閉めた。「今日もさむいな!閉めとくよ!」

老婆はうれしそうにお礼を述べていた。



残念、今日はおいしいものを食べ損ねた。

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