第19話 4
(オレはこんなヤツのために、自分の人生をかけてアイツらに復讐しようとしていたのか!)
そう思うと情けなかった。
惨めだった。
(オレは本気で詩織先輩のことが好きだった……。なのにアイツは、そんなオレのことをあんな風に思っていたのか!)
あの優しくて思いやりに満ちた詩織先輩はそこにはいなかった。
スタイルが良く美人になると、あんな風に変わってしまうのか。
これじゃまるで鎌田由美と同じじゃないか。
「ちくしょう……!」
オレは悲しくて仕方なかった。
そんなオレの後ろから追って来る足跡があった。
さっきとは別の侍女がオレを追い抜き、振り返った。
「転移ゲートまでご案内いたします」
そう言ってオレの前を歩き始めた。
侍女は転移ゲートのあった部屋に案内してくれた。
部屋の入ると先程通った転移ゲートがあった。
転移ゲートの向こうにオレの部屋が見えた。
「そのままお通り下さい。リョーヤ様の世界に戻れます」
侍女はそう言うと転移ゲートの隣りで深く頭を下げた。
オレは呆然とした気持ちで転移ゲートに近付き、数十センチ手前で立ち止まった。
「鎌田由美みたいになりやがって……」
とオレは呟くようにそう言って、右足を転移ゲートの中に入れようとした。
だけどその時、オレの頭の中で何かが弾けた。
(鎌田由美のことは詩織先輩も嫌いな相手だったはずだ……)
そしてオレを苦しめた相手なのも分かっている。
(なのに、さっきの言動は、どう見たって鎌田由美みたい……いや、モノマネと言っても過言じゃない……)
そう思うと、さっきの侍女とのやり取りが、何処となくぎこちない物に思えて来た。
(何なんだろう……胸の奥から突き上げて来る、この違和感は……)
「どうかされましたか?」
侍女が怪訝な顔をした。
オレは侍女に向き返った。
「話してくれないか?」
「えっ?」
侍女は少し驚いた顔でオレを見た。
「何を…でしょうか?」
「本当のことを、すべて話して欲しいんだ」
オレがそう言うと、侍女は大きく目を見開いた。
そして、しばらくおれを見つめた後、侍女は頷いた。
「承知いたしました。全てお話しいたします」
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