幼女と幼男は愉悦を貪りたい②モナ編

「僕虐められてるんだ。だから飛び降りた」


 今、モナは少年が休んでいる寝床に腰掛け、横になりながら話す少年の、件の理由を聞いている。


「虐めねぇ。例えば?」


 モナからしてみると、人間のましてや少年少女の言う虐め。その内容が把握出来ない様子だ。少年は、モナの問いかけに俯きながら再び話し始めた。


「臭いとか、汚い、とか、桶の水をかけられたり――」


「え。そんな事で少年は死のうとしたの?」


 全く理解が追いつかないのだろうモナは、少年の話を遮り、疑問を正直に投げかけた。


「それだけじゃないっ! 段々と僕に対して酷くなってきて、裸にさせられて大勢の前で棄てられたり、トイレに顔を押し付けられたり、殴る蹴るは毎日受けた……」


「ふーん。やり返さないの?」


「そんな事したら、もっと酷い目にあう……」


「うーん。なら殺しちゃえば良いじゃん」


「は、え? 無理だよっ、勝てるわけないし、人を殺すなんて僕には出来ないよっ」


 突然目の前の吸血鬼に殺せと言われ、少年はあたふたした様子を見せた。


「それなら、私が代わりに殺してあげようか?」


 私に任せなさいっ! と言わんばかりに自信満々の様子のモナ。


「いやいやいや、ダメだよ!」


 少年はエスカレートしていくモナの発言に、次第に青ざめながらモナを否定した。


「でも少年は自分を殺すことは出来るんでしょ? おかしいよ。それって矛盾だよ」


「それは……。せめて僕にこれ以上何もしてこないようになるなら、頑張れるとは思うけど――」


「むぅ。焦れったいなぁ。じゃあ目には目をって奴だね! よし、お姉様が何とかしてあげるよ! 私は凄いのよっ! ぷぷぷ」


――ドンッ


――グヘッゴヘッ


 自身の胸を叩き「私は凄いっ!」と、豪語するモナは、手加減出来なかったのか、噎せはじめ息を荒らげる。


 普段ならあまり考えることをしないモナ。その彼女が珍しくも、少年の受けている仕打ちがどの様なものなのか、その人数は、何処でなのか、それ等を少年かから聞き取り、仕返しの方法を考えている。普段サシャに丸投げしているモナは、少しだけほんの少しだけ成長したのかもしれない。


 その後、リリーもサシャも帰ってこなかった。


 (そんなに遠かったっけ?)


 家人が帰ってこなかった為、諦めたモナは少年に「バラしたら殺す」と脅し、少年を抱え空へと羽ばたいていく。


 少年へは、任せておけば大丈夫だよと伝え、1週間位我慢しなさいとキツく言いつけ、少年を家へ送り届けた。そう。モナは壮大な1週間計画を思いついたのだった。


 1日目 翌朝


「ふふーん。これが例の学園とか言うやつなのね。中々立派じゃない! ぷぷ」


 モナが踏み入れた建物。其れは少年が通ってると言っていた、ハイベルタ学園。屋敷からもすぐ近くの子供達が便学を学ぶ場所らしい。


 その建物を目にし、モナは心を躍らせ感想を述べていた。


「すみません。関係者以外は――」


「今日から講師になったモナだよーん。宜しくね」


「――はい。宜しくお願いします」


「貴女達が集まっている部屋に案内してくれる?」


「畏まりました。此方です」


 モナは学園から出てきた講師と思われる女性に向けて、催眠術の類を使ったようだ。女性は瞬時にモナの手の内で転がされる羽目になってしまった……。


「はいはいみなさーん。今日からあなた達の仲間? いや違うかぁ。兎に角、私の下僕になってもらう事にしたから、暫く宜しくね♡」


「「「宜しくお願いします」」」


 なんとモナはこの学園の講師陣全員に対して、モナの言う下僕化をしてしまったのだ。モナは彼等から、少年の通う教室や、それ以外の生徒達、講師陣から見て、少年がどの様な虐めを受けているのか聞き取っていく。


 つまり、モナなりに解決を試みようとしているのだ。先ず彼女は、生徒達には力を使わずに、成り行きを見届ける事から始めた。


「モナでーす。暫くこの教室の担当になるから宜しくね」


――ざわざわ


 教室の生徒達は男女20人の構成だった。例の少年に対して、モナは軽くウィンクをし「黙ってなさい」と、威圧をかけた。なんとも無茶苦茶な講師である。


「じゃあ、皆、自己紹介でもしてくれる?」


 そう言われた生徒達が順番に名乗っていく。

 モナはこんかいのターゲットを確認した。


 (この子達がねえ)


「はい。ありがとね。じゃあ帰るまで自習してて。敷地内で悪さしなければ、好きにしていいから」


 なんとも横暴であるが、モナはこの時間も壮大な1週間計画として考えているようだ。


 その日、生徒達が帰るまで自習にし、少年へはモナの蝙蝠を貼り付けさせ監視していた。





「おい、ビータノー。あの講師に見られて何ニヤついてたんだぁ? あぁ?」


――ドゴォン


――バキッ


「ゴーダー、また脱がせて晒し者にしよーぜっ」


「ネース、良いなそれ、シズーリちゃんも見たいだろ? 此奴のアレ」


「はぁ? 気持ちわりーっ。糞見てぇなもん見せつけてんじゃねーよ、殺すぞっ」





 2日目


「はい。今日も自習だよ。適当に宜しく」


 (昨日はまぁ。なんて言えば良いのかなぁ。今日はどうなるんだろ)





「おぃ、早く死ねよ。ゴミのビータノー! ってかよ、くせぇしきめーんだよ、あぁ、見てるだけでイライラしてくるなぁ、てめーはよぉ! さっさとこの街から消えれっ」


――ぺっ


「シズーリちゃん、こえぇ。本当になんで死なないの? 生きてる価値ないだろ、ほんとに屑やろーだな。俺なら耐えられねーよ! ガハハ」


「ってかさ、俺たちで無理矢理追い出しちゃえばいんじゃね? ゴーダー。講師共に色々適当なこと言ってさ、退学にさせちゃえば?」


「良いこと言うようになったじゃねーかよ、おめぇにも玉ついてたんだな。ネース」


――ギャハハッ


――ドコッ


――バシャーッ




 3日目、4日目も差程変わらず、少年の身体は打ち身傷切り傷が目立ち始めた。







――――――



評価・ブクマ頂けると祭囃子の励みなります。

よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る