9月11日(水)

〈陽菜乃視点〉









サクラ「先輩?」






横から聞こえてきた桜の声に「えっ?」と

顔を向けると財布を片手に持って

立ち上がっているから

もう休憩時間になったんだと分かった






「あっ…ボーっとしてた…」





サクラ「体調悪いんですか?」





「ううん、集中力が切れたみたい!笑」





サクラ「週半ばのアルアルですよね?笑」





ソウジ「そんなアルアル作ってほしくありませんね?笑」






桜と笑いながらフロアを出て行こうとすると

蒼司君が嫌味を言う前によくする

ニコニコ顔で近づいて来た






ソウジ「お昼ご一緒してもいいです?笑」





「・・・・どーぞ…」






蒼司君は定食屋へと入って行くと

メニュー表を手にとり「サバ味噌定食を3つ」と

勝手に注文を取り出して私も桜も

「えっ…」となった…






サクラ「あんたね…」





ソウジ「同じメニューの方が早く出てくるし

     お店側への配慮ですよ?笑」






サバ味噌は好きだけど…

気分ってものもあるし、何より勝手に注文しないでよ

と言いたいけれどお店の中でそんな

恥ずかしい言い合いが出来るわけもなく

私も桜も出されたお冷を飲んだ…






蒼司君の言う通り待ち時間も短く

皆んなの前にサバ味噌の乗った定食が置かれ

箸をつけて食べ出すと…






ソウジ「DHAとEPA…このふたつ摂取すると

    集中力がアップしますからね?

  今のヒナ先輩には最適のランチですよ?笑」





「・・・・えっ?」






ソウジ「午前中にお願いした資料…出来てます?」






「あっ…16時までのってやつね…

  半分出来てるから大丈夫だけど…」






ソウジ「・・・・それ15時には仕上がります?」






一気に低くなった蒼司君の声に

「えっ?」と顔を上げると

蒼司君は箸を置いて「先輩…」と

真っ直ぐと私を見ている…






ソウジ「16時までの資料を

  16時までに渡せばいいなんて…

   入社7年目の先輩がする事じゃありませんよね?」






「・・・・・・」






サクラ「ちょっと!」






ソウジ「桜先輩は黙っててください!

  コレは僕がヒナ先輩に頼んだ仕事なんですから」





「・・・・15時までには仕上げる…」





ソウジ「・・・・お願いします」







蒼司君はそう言うと箸を持って

また食事に手をつけだした…







「お疲れ様…蒼司君コレ…

  午前中に頼まれていた資料です…」






14時40分に定食屋で言われた資料を

手渡すと蒼司君はパラパラと中身をチェックして






ソウジ「確かに受け取りました!

   先輩、ありがとうございます!笑」






蒼司君の笑顔を見てホッとしながら

自分の席へと戻っていき

「大丈夫でした?」と心配する桜に

「うん」と答えてまた自分の仕事に戻った






( ・・・・何してるんだろ… )






蒼司君から資料を頼まれたのは朝の9時で…

量もそんなになく…

本来ならお昼休憩後、直ぐに渡せるものだった…






ソウジ「入社7年目の先輩がする事じゃありませんよね?」





( 1年目の蒼司君に指摘されるなんて… )






最近仕事に身が入っていないのが

自分でもよく分かる…

そして…理由もちゃんとよく分かってる…





また頭の中が別の事を考え出すのが分かり

デスクの端にあるブラックコーヒーを

一口飲んでから仕事に集中した…


 



その日はキリの良いところまで仕事を進めたく

「少し残るね」と帰る桜を見送り

無心でキーボードを指で叩いていた







( ・・・・こんな自分イヤだな… )









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