9月13日(金)

〈陽菜乃視点〉








サクラ「先輩、今日も残るんですか?」






「コッチで予定あるから

 それまで仕事でもして時間潰そうかなって?笑」






サクラ「まぁー確かに屋根はありますし

  冷暖房完備、コーヒー飲み放題ですからね?笑」





「そうゆう事!また来週ね」






PCに顔を向けて仕事をしていると

肩を急に叩かれてビクッとして後ろを振り返った






ソウジ「・・すみません…

   何度か声かけたんですけど…」






驚いた私に肩を叩いた蒼司君も驚いたようで

肩から手を離して1歩後ろに下がると…






ソウジ「先輩に見てほしい資料があって…いいですか?」





「あぁ、いいよ…どれ?」






水曜日の件以来、蒼司君から「先輩!」と呼ばれると

また何かしたかなと構えてしまう…





ソウジ「コレなんですけど去年の資料じゃ…」





蒼司君はまだ1年目なのに

仕事に対する姿勢は3年目、5年目…

7年目の私なんかよりも…

誰よりも真面目で一生懸命だった…





ソウジ「あー!なるほど!ありがとうございます」





そう言って席に戻ろうとする

蒼司君に「蒼司君」と声をかけた…





「あのね…あー怒んないで聞いてほしいだけど…」





ソウジ「・・・・・・」





「あの…」





この前の「アルアル話」みたいに

また蒼司君の気に障らないかと不安でいると…





ソウジ「独り言ですよね?」





「えっ?独り言??」





ソウジ「先輩の独り言にイチイチ文句言うつもりは

  ありませんから…独り言ならどうぞ?笑」






蒼司君は隣りの桜の席に「失礼しますよ」と

いない桜に一言いってから座ると

目を閉じて「目が疲れたんで少し休みます」と言った






「・・・・なんで…そんなに仕事頑張るの…」






ソウジ「・・・・・・」






「頑張らない方がいいとかじゃなくて…

  入社…1年目なのに…

  なんでそんなに凄いのかなって…」






ソウジ「・・・・・・」






蒼司君は目を閉じて腕を組んだまま

何も答えてはくれず「以上です…」と私が小さく言って

自分のPC画面に顔を向けると…






ソウジ「僕も独り言ですけど…」






「・・・・・・」






ソウジ「なんで、出来るのにやらないんです?

  先輩本当は中城先輩や高嶋先輩みたいな

    アッチ系の仕事も出来ますよね?」






「・・・・・・」







ソウジ「先輩1日の24時間のうちに何時間寝てます?」







「えっ…」と、答えていいのか戸惑ったけど

質問しているんだと思い「6〜7時間?」と答えた







ソウジ「仕事に行く身支度をしてから定時退勤で

  家に帰り着くまでは何時間です?」






「えっと…12時間…半?」







ソウジ「先輩の1日のうちの空いてる時間って

    ザッと5時間くらいなんですよ…」






「・・・・えっ…」






ソウジ「僕もって言うか…大抵皆んなそうですよ

  社会人になったら24時間の大半は

   〝仕事〟がメインじゃないですか…

   休みなんて週に2日で残り5日は

    さっきみたいな1日を送るんですよ…」






「・・・・・・」

 





ソウジ「だから僕はプライベートよりも

  今の僕の生活のメインである仕事を早く

    充実させたいから頑張っている感じですかね?」






「仕事が生活のメイン…」



 



ソウジ「僕は結婚もしてませんし

    家庭もないからそうなりますけど

    中には家族がメインの人もいるでしょうからね」

 






何となく蒼司君を怖いと感じる理由が分かった…

痛いところを嫌味でついてくるのもだけど…

多分…〝社会人〟としての覚悟や考えた方が

この子に負けているからなんだろう…






ソウジ「先輩の生活のメインは何です?」





「・・・・私のメイン…」






そう口にしながら

ウサギが今日バイトの子達と仕事後に

まかない料理を作り合うと

楽しそうに話していた姿と…




目の前で、ゆっくりと目を開けて

コッチをジッと見ている蒼司君の姿が…

二人の姿が嫌な位に交差して見えた…








サクラ「今日って…13日の金曜日なんですね!?」





「ジェイソンだっけ?笑」





サクラ「ジェイソンは怖くないですけど…笑

  なんか13日の金曜日ってだけで

  不吉な感じしません?笑」

 

 

 




朝出勤してきて桜が

ふざけて言っていた言葉が

今じゃ…少し怖く感じる…








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