8月31日(土)

〈ハルト視点〉








セイ「客引き出したぞ!笑

  上手くいけば12時丁度に祝えるかもな?」






ハルト「今日は早いな!笑」






中で洗い物を片付けていると成泉が

下げてきた皿を置きながら

話しかけてきて二人で笑っていると






玄「陽兎!友達が来てるぞ」





ハルト「友達??」






友樹達がバーで集まると言っていた事を思い出し

顔出しに来たのかと店内にいくと…







ハルト「煌??」





アキラ「お疲れ!笑 ギリギリで悪いな?」





ハルト「いや、どうしたんだ?一人か??」





アキラ「うどんか何か…直ぐ出来るの頼むわ」






煌は普段バイト先に来るような性格じゃないし

何かあったのかと思いながら

オーダーを伝え頼まれたコーラを持って行った







ハルト「はい!急にどうした?」





アキラ「お前あと1時間もしたら誕生日だろ?

   だからプレゼントの前渡ししとこうかと思って」





ハルト「見る限り手ぶらだぞ?笑」





レイナ「なに、陽兎の友達?何学部?」






カウンターに座っている煌の隣りに立って

話していると玲奈が通しを持ってやって来て

煌に話かけたが…




煌は学校にいる時同様、愛想を見せる事もなく

「経済」とだけ答えると顔を背け

コーラを飲み出してしまった






ハルト「玲奈…悪いけど洗い物いい?」






俺は気まづい雰囲気にタメ息を吐き

玲奈にやりかけの洗い物を頼んで

煌と二人になると






ハルト「お前、玲奈はお前に言い寄ってくる子達と違って

  俺の大切なバイト仲間なんだぞ!」






アキラ「・・・・お前の大切ってなに?」






ハルト「え??」






煌は普段見せるニコニコとした表情でも

玲奈に向けた様な冷めた目でもなく…

俺をジッと真顔で見てきた…




煌のそんな顔は初めてで

言葉が詰まっていると「はい!お待ち!」と

成泉が頼んでいた、うどんを運んできた






セイ「えっらい男前な友達だな?笑」






煌がまた玲奈みたいに素っ気ない態度を

とるんじゃないかと心配していると

煌は「そうでもないよ」と笑って答えていて

少し安心していた







成泉は「アッチ片付けてくるわ」と言って

離れていき煌とまた二人になると





アキラ「客少ないしもう終わり?」






うどんを食べながら煌がそう問いかけてきて

「あぁ…早めに終わりそうだな」と答えると






アキラ「じゃー、さっさっと帰って

  お姉さんの所に行った方がいいと思うよ?」






ハルト「いや、ヒナとは明日の昼に会う約束なんだ」







煌は顔を向ける事なく前を向いたまま

うどんをすすっていて






アキラ「なんで?早く帰れるなら

  一緒に誕生日迎えた方がいいんじゃない?」






ハルト「今日はこのまま店で祝ってもらうんだよ」






アキラ「・・・・そっか…」






煌はそれだけ言うとコーラの入った

グラスを手に取り口に持って行く事なく

眺めながら「なぁ…」とコッチに顔を向けた






アキラ「お前…最近お姉さんと大丈夫?」






ハルト「へっ?ヒナと?」






アキラ「・・・・・・」






煌は真っ直ぐと俺を見ていて

何もないのに煌がここに来るはずがないから

きっと何かあったんだと思った







ハルト「ヒナに何かあったのか?」






アキラ「・・・・別に何もないけど…」







煌の言葉に「ないのかよ…」と

安堵の声をあげると

煌はまた顔をテーブルのうどに向けた







アキラ「何かあってからじゃ遅いと思うよ…」






ハルト「・・・・・・」






煌は箸を握って「陽兎」と呼んで

どんぶりの中で伸び始めた麺を箸で一本掴んだ







アキラ「最初は頑丈なんだよ…」






ハルト「え?」






アキラ「でもずっとお湯に浸かってると

  段々と伸びてくるんだよ… 」





ハルト「・・・・・・」






アキラ「・・・・そして簡単に千切れるんだよ…」







そう言った瞬間…煌の箸に掴まれていた

麺がプツッと切れてどんぶりの中へと落ちていった






アキラ「一度千切れたら中々…元には戻らないよ…」






煌の言っている意味が分からないわけじゃなかった…

だけど何で急にそんな事を言うのかが

分からず黙っていると






アキラ「何かあってからじゃなくて

  何かある前に、会いに行った方がいいよ」






ハルト「・・・・・・」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る