8月14日(水)

〈陽菜乃視点〉








「・・・・・・」





先週の金曜日以来ウサギは前よりも

LINEを送ってくる量が多くなっていて…

多分私との距離を感じ

その理由が忙しくて

中々会えなかったからだと思ったんだろう…






「・・・・はぁ…」







ウサギは今、バイトの皆んなと

キャンプに行っていてその写真を送ってきているけど…

「見たくない」と呟きスマホを置いて

シャワーを浴びに向かった…






洋服を脱いでウサギからつけられた痕が

もうほとんど消えかかってるのを見て

指で数回撫でてから首の後ろに手を当て

「はぁ…」と息を吐きながら浴室へと入って行った



 



熱いシャワーを浴びながら目を閉じて

数ヶ月前の記念日の日に泊まったウサギが

「キスマークをつけて」とダダをこねた事を思い出した…






「・・・・ずっと…不思議だった… 」





 


ウサギからある日電話で

「洸達から揶揄われたよ」と嬉しそうに言われた時も…

コンビニの彼のあの言葉も…


 




アキラ「好きだからつけたいんだよ…笑

  だからお姉さんもたまにでいいから

  また見えにくい所につけてやってよ?

  アイツ喜ぶから!笑」






(・・・・また?? )






最初は勘違いかと思っていた

だって…ありえないから…




でもホテルのプールでウサギの首の後ろに

ついているモノを見て

勘違いではないんだと分かった…






アキラ「だからアレ!笑

  顔だらしなくして喜んでた!」



 



シャワーの蛇口を回してお湯を止めて

鏡に映る自分の顔を見て笑った…


 




「お湯じゃなくて水で浴びればよかったかな…」






涙で少し腫れてる自分の目を見て

家族に気づかれない様に保冷剤を持って

部屋に上がろうと思い浴室から出た…







私がウサギに痕をつけた事は

一度もなかった…





あの記念日の朝はダダをこねるウサギの

首の後ろを軽く吸っただけで…

痕なんてついていなかったから…







部屋に戻るとスマホのバイブが鳴っていて

画面にはウサギの名前が表示されていた






「・・・・もしもし?」





ハルト「何回もかけたんだよ…」





「お風呂に入ってたのよ」





ハルト「お風呂でも…長いよ…」






電話の向こうで拗ねた声を出す

ウサギに苦笑いを浮かべて

「電話大丈夫なの?」と聞くと…



 


ハルト「腹壊したことになってもう30分だよ…

  誰かさん全然でないし…」





「ずっとトイレにいるの?」





ハルト「そうだよ…」





「・・・・・・」





ハルト「なんか言ってよ…」





「ふふ…お腹大丈夫?笑」






ウサギは可愛くて純粋で素直だ…

キスマークをつけているのは私だと思い込んでいる…

そして、痕をつけてるのはきっと

今一緒にキャンプにいる誰かだろう…





バイト後によく皆んなで残り

酔っ払ってお店で寝て帰ると言っていたし…






ハルト「ヒナ!ヒナってばッ!!」






「聞いてるわよ…

 相変わらず生意気なんだから…」





ハルト「この後もちゃんと返事返してよ!

  寝る時はちゃんとおやすみ送ってきて!」





「友達といる時くらいいいわよ…

  ちゃんと皆んなと仲良く遊びなさい?笑」





ハルト「連絡してても遊べるよ!笑

  ちゃんと返してよ!いいね!」





「ハイハイ…」




 


電話を切った後にスマホをまた置いて

手に握ってある保冷剤を目の上に当てた…





( 出来れば今は連絡はとりたくない… )







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