〈陽菜乃視点〉








会社を出るとタクシーに乗って移動をし

何処で食べるのかを聞くと…







ソウジ「行きたかった店なんですけど…

  あっ!このタクシー代と食事代は出しますけど

  帰りは各々で出してくださいね?」







「・・・・食事代はいいわよ…

  まだ初任給でたばかりでしょ?」







ソウジ「学生時代にバイトして少しは貯金も

  ありますから今日の分くらいなら大丈夫ですよ

  先輩達みたいに浪費癖もありませんし?笑」






サクラ「浪費癖??」






「ホント…カンに触る子よね…」







タクシーから降りて辺りを見渡しながら

ウサギのバイト先もこの辺りのはずだと思っていると






ソウジ「オープンしたばっかりみたいで

    来てみたかったんですけど一人じゃさすがに

  厳しいから先輩達をついでに?笑」





サクラ「ついで…」





「オープンしたばっかり??」



 



ソウジ「はい!結構人気みたいなんですよ

  創作居酒屋?でしたっけ…」






聞けば聞くほどウサギのバイト先のような

気がして足が立ち止まった…







「他は…??焼肉とか??」


 




ソウジ「もう予約してますけど…

  肉食べたいんですか?居酒屋にもありますよ!」






スタスタ歩いて店の扉を開ける蒼司君に

(えっ?)と思いながら近づいて行き

桜の後ろからヒールの足音を消して中に入った






ハジメ「いらっしゃいませ…3名様ですか?」






「・・・・・・」






ウサギから送られてくる写真に写っている

男の子を見て間違いないと思い

店員の後をついて行きながら

案内された先が個室な事に安心した







サクラ「へー個室あるんだ!」







ソウジ「僕、食事はゆっくりしたい派なんで」







掘り炬燵式のテーブルに桜は

喜んでいたけど私はソワソワしてそれどころじゃなかった






ガラッと扉が開くと若い女の子がお通しを

運んできて蒼司君の顔を見ているのに気づきハッとした…





(  蒼司君見て変なヤキモチ妬かないかな… )






性格はイマイチだけど…

パッと見じゃなくても間違いなくイケメンの蒼司君に

なんでそんな顔してるのよと思った…





また扉が開いてビクッとすると、違う別の女の子で

また蒼司君をジーっと見ているから…気づいた…






( 交代で蒼司君を見に来てるんだ… )






ウサギが来るのも時間の問題だと分かり

メニュー表に顔を隠したまま悩んでいると

ガラッと扉の開く音がして

「先輩なんにします?」と桜が聞いてきた






「あっ…梅酒かな…」






5人中3人は顔を見たから

次はウサギかもしれないと思い

ずっとメニューを見ていると

太ももの外側に店員さんの足が当たってきて

まるで押し付けるみたいにピッタリと当たる

その足の方に目を向けてから

ゆっくりと顔を上げるとやっぱりウサギだった…







ソウジ「陽菜乃先輩お肉がいいんでしょ?」



 



「えっ…あぁーうん…」







蒼司君から話を振られウサギに向けていた顔を

蒼司君の方へと向けて返事をすると

ウサギが更に足を押し付けてきた…






サクラ「スジの煮込みとかですか?」






ソウ ジ「それも食べたいですけど…

  今日は打ち上げも兼ねてですから

  この和風一口ステーキにしましょう!」







桜と蒼司君の話を聞きながら

左手をそっと下に下げてウサギの当たってる

膝部分にあるエプロンを軽く握った…

2週間ぶりに会うウサギに甘えたかったから…







ソウジ「先輩何肉が食べたいんです?」






ウサギの顔をずっと見るわけにもいかないし

やっと会えたウサギとギクシャクもしたくなく…

気がついたら「ウサギかな…」と答えていた






ソウジ「ウサギ??」






サクラ「えっウサギ料理があるんですか?」






ハルト「いや…ちょっとないですね?笑」







自分でも変な事を言っているのは分かってるけど

ウサギの笑ってる声が聞こえてホッとし

ウサギの方に顔を向けると…







ハルト「うちのメニューにはないから…

 お客様の方で手配して食べていただくしかないですね?笑」







「・・・・はい…」







久しぶりに見たウサギの笑顔に胸がキュッとして

顔をメニューの方に戻すと

「ビックリしましたよ!笑」と蒼司君が言いながら

メニューを注文していき

ウサギは立ち上がる前に一度私の手を軽く

握ってから「失礼します」と出て行った







サクラ「可愛い子でしたね?」






「うん…」






ソウジ「二人とも彼氏がいるのに… 彼氏君達が可哀想だなぁ?笑」






サクラ「彼氏君?」






ソウジ「二人とも彼氏は年下ですよね?」






サクラ「そうだけど君より年上よ!

  でもさっきみたいな可愛い子なら

  もうちょっと下でもいけるかな…?」







桜の言葉にどんな顔をしていいのか分からず

出されたお冷を飲んでいた…







ソウジ「先輩は?先輩もさっきの可愛い店員君となら

    年離れてても付き合いますか?」







蒼司君の言葉の後にまた扉が開いて

よくウサギの話に出てくる成泉君がお酒を持って入ってきた







グラスを受け取りながら「で?」と

さっきの質問の答えを待っている蒼司君に

「まぁ…」と答えると

「意外ですね」と笑っている…






成泉君が出て行くと桜が

「ここの店員は顔のいい子が多いですね?」

と出て行った扉の方を見ながら言い出し






ソウジ「目の前にいる僕にも言ってもらえます?笑」







サクラ「なんかもう顔を通り越して中身見ちゃうと

  ダメですよね?さっきの子達も

  性格は蒼司君みたいに可愛くないんですかね?」







「・・・・・・」







あの子は私の彼氏だと言いたいし

性格も生意気だけど凄く可愛いんだと言いたかった…









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