2月10日(日)

〈陽菜乃視点〉







昨日のウサギからの連絡は

あの1通のみで電話もくることもなく…

今日もやっぱり現れる事はないだろうと思い

お昼前から不動産屋に行きまた何軒か見せてもらっていた







「大通りにも近いしここなら安全かな… 」






担「そうですね曲がって直ぐなので

  路地をずっと歩くよりかは安心ですね」








4軒目に案内された物件が一番立地もよく

残業になっても安心かなと思い

そこに決める事にした






ウサギとの約束は破ることになるが

嘘をついて音信不通のウサギから

とやかく言われる筋合いもないと思い

お店に戻ってから契約書にサインをした






( ここならウサギも怒らないだろうし… )






ウサギが心配していた防犯面も大丈夫だろうと思い

手続きを済ませて帰りながら

新しい家具やカーテンも見に行かなくちゃねと

来週の週末は買い物に行こうと考え足取りも軽く

自分のアパートへと帰っていくと…







「・・・・えっ?」






ハルト「・・・・お帰り…」







部屋の前にウサギの姿があり

連絡はなかったわよねとスマホを取り出して

確認するけれどヤッパリ何も連絡は入ってなく…





ウサギの顔は怒ってる感じもなく

少し気まずそうに俯いているから何か話に

来たんだと分かり部屋の中へとあげた






「いつから待ってたの?」





ケトルでお湯を沸かしながら

ウサギの背中に問いかけると「さっき」と

聞こえてきて、嘘だと分かり鼻から小さくタメ息を吐いた…






( 嘘ばっかりね… )






コーヒーを煎れてウサギの前に出すと

ウサギは私が持って帰ってきた不動産屋の封筒を見て

また気まずそうな顔をしている…







「・・・・試験はどうだった?」







風邪の話も部屋の話も避けた方がいい気がして

違う話をふるとウサギも少し安心したような

顔をして「いつもより書けたよ」と話し出した





ウサギは泊まる用の荷物も持って来てないし

もうすぐ17時になるから

きっと直ぐに帰るんだろうと思い

ウサギが今日話に来た内容を話出すのを待ったけど

ウサギは中々話そうとせず…







「・・・・何かあった?」







私の方から切り出すとウサギは直ぐに目を伏せて

「引っ越し…今じゃなきゃダメ?」と小さく問いかけてきた





「え?引っ越し??・・・・今って言うか…

 更新年だし…しようかと思ったんだけど…」






ハルト「・・・・次の更新いつなの?」







「2年後の3月よ?どうかしたの??」







ハルト「2年後じゃ…ダメ?」




 



「ぃや… もう今日…契約してきたけど…」







何故2年後と言うのか分からないけれど…

さっき契約してきてしまっているから

ウサギに言いづらく感じながらもそう伝えると

パッと顔を上げたウサギの顔は

見る見る険しくなっていき…






ハルト「待ってって言ったのに一人で決めたの!?」







ウサギの言葉にムッとした私は

「風邪だったじゃない…」と小さく呟くと

「はッ!?」と更に怖い顔をするウサギに

少しビクッと体が揺れた…







ハルト「何でなんでも一人で決めるの!?

  俺の意見は無視なの??」







「・・ツッ・・何で私が怒られるのよ!!

  ただ引っ越すだけじゃない!!


  それに…風邪だなんて嘘を吐いて

  会いに来なかったのはソッチでしょ!」







ハルト「それは…急に引っ越しなんて言っても

  コッチにもタイミングとかあるんだよッ!!」







「タイミング??」







ハルト「急に家出るなんて…

   じーちゃん達も驚くだろうし…寂しがるから」







「・・・・へ?」







この時初めてウサギが桜と同じ勘違いを

しているんだと分かり固まった…







「・・・・家を…出る?」






ハルト「・・・・えっ?」







私の反応を見ながらウサギの眉間にあるシワが

段々と消えていき目を丸くしてコッチを見ている…






ハルト「・・・・もしかして…一人で住む…の?」







私は封筒から契約書を取り出してから

ウサギにある部分を指さしてから見せた







ハルト「入居者…一名??」






「・・・・そぅ…」







ウサギの顔はジワリ、ジワリと赤くなっていき

手前にある私ののイニシャルの入ったマグカップを

両手でギュッと握っている







「・・・・はーちゃん?」






ハルト「・・・・今はコッチ見ないで… 」







ウサギはマグカップを握ったまま体をずらして

私に背を向けているけど見えてる耳は赤いままで

恥ずかしそうにしている








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