〈陽菜乃視点〉










地元の独身仲間達と食事をしてから

二軒目はどこもいっぱいで入れず

小さな居酒屋に入り少し汚れた畳の上にある

座布団に座るとジトっと湿っている感じがして

嫌だなと思いつつ腰を降ろした






お酒の種類もそんなには無いけれど

値段も安くダラダラと話しながら

いる店にはいいかもねと

お酒と軽いおつまみを頼んでから

1軒目では出来なかった

独身女ならではの話で盛り上がっていた






女「初体験…あれが間違いよ!

  もっといい相手がいたはずなのに!」






女「あー…あたしとかお互い初めて同士で…最悪よ」







お酒もすすみ話題は10年近く前の

初体験の話になりだして

ウサギも10年後こんな風に話しているのかなと

考えて、ウサギの初体験となる一昨日の夜を思い出し

フッと笑いが出てしまった







「初めて同士ってどんな感じなの?笑」







女「もうムードも何もないわよ!

  覚えてるのは暑くて汗だくだった事と

  痛くて泣いた事くらい!!笑」







女「向こうもいっぱい、いっぱいだろうしね?笑」







女「アッチは気持ちいいかもだけど

  コッチは苦い思い出よ?」







「・・・・・ん?」







話していると自分のバックから着信を知らせる

バイブ音が聞こえてきて

「だれ?」と皆んなが言う中

私もこの時間に誰だろとスマホを取り出し

「あっ…」と声に出してから

外に出て行き通話ボタンを押した







ハルト「アッ!デタ!笑」







こんな時間にかけてきた非常識なウサギに

お説教でもしようかと思っていたけど

電話の向こうのウサギは酔っ払っているのか

テンションは高く上機嫌な声をしている…






二次会はカラオケに行くと届いていたから

またハメを外して飲んだのだろうと思いながら

居酒屋の壁にもたれて腕を組んで呆れていると








ハルト「ネー…女の人としか…飲んじゃダメだょ…?」







前から思っていたけど…

普通逆じゃない??




どちらかと言うと

若くて可愛い見た目をしているウサギの方が

同年代の女の子達と遊んでいるのを

アラサーである私が心配するのが普通だと思うけど…






ウサギは私が男の人と飲むのを心配して

「ダメ、ダメ!」と言ってくるし…

洋服や髪型…夢にまでダメ出しをしてくる…







「その彼氏はお前にベタ惚れだ!笑」







この前、先輩から言われた言葉を思い出し

電話の向こうで「返事して」

と甘えるウサギが可愛く思えてきた







「はーちゃん!」と呼ぶと「ん?」と返事をする

ウサギの姿が想像できて組んでいた腕を解いて

居酒屋の入り口に吊るされている汚れた提灯を

触りながら女友達だけだから寝なさいと伝えると







ハルト「・・・ヒナがいないからダメ… 」







半分眠りそうな声をしながら話すウサギの

言葉の意味が分からず「ダメ?」と聞き返した








ハルト「・・・・ハダカのヒナとまた…ネタイなぁ…」








ウサギの言葉に一瞬驚いたけど

寝ぼけていて明日には覚えていないであろう

今の言葉に「エロウサギなの?」と笑って返した






ついさっきまで友人と話していた初体験の話を

5年後?10年後??彼が私たちのように

いつか話す時がきたら

ウサギは何て言うのかなと想像した






きっと私達は…もう側にいない様な気がして

そんなお姉さんがいたなと

ウサギは思い出すのかなと考えて

提灯のホコリを人差し指で

スッと取ってから地面へと落とした







ハルト「ふっ…カレシだから…いんだョ?笑」






そう、私とウサギは今はちゃんと付き合っていて

ウサギは私の彼氏で…好きな人だ…







「ふふ…笑 帰ってきたらね?笑」







どんなに好きな相手で離れないと思っていても

いつかは必ず終わる時がくる…



現に私を含めた友人皆んな

どうでもいい相手に初めてを捧げたわけではないが

時が流れて年を重ねて、気がつけば…

「そうだった!」と笑い話の思い出となっている







ハルト「んー… ハヤク…かえるネー……zzZ」








ウサギの寝息が聞こえてきて

「おやすみ」と伝えてから電話を切り

「可愛いヤツ」と呟いてから皆んなの元へと戻った






いつか離れる未来だとしても

ウサギが皆んなに笑って話してくれるような

そんな楽しい時間を過ごしていきたいなと思い

その後も友人と今までの恋愛話なので盛り上がった







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