〈陽菜乃視点〉








髪を軽く引っ張られている気がする…

美容室でよくされるみたいな…

なんだろ…気持ちいいなぁ…






美「陽菜乃さん今日はどうしましょうか?」





「・・・・ん…中津さんの…好きに…」






通っている美容室の椅子に座って

鏡に映る自分の姿が見えて何となく

夢の中のような気がするけど…



担当美容師のお兄さんの顔も出てきて

いつもの質問をしてきたからどうしようか悩んだけど

前回のボブも気に入ってるし…



中津さんの言う通り大人っぽい雰囲気よりも

今の感じの方が似合うんだろうと思い

中津さんに任せようと口を動かしたら…






ハルト「ヒナッ!!!」





いきなり響くウサギの声に驚いて

パチっと目を開けると

目を釣り上げて怒った顔をした

ウサギのアップがあった…





「・・・えっ…?」





ウサギは上半身裸で…

ここがどこで、なんで一緒に寝ているのかを思い出し

急に恥ずかしくなって顔半分を毛布の中に潜らせた…





「・・・早起きだね… 」





おはようと口にするのが何だか昨日の夜の事を

生々しく感じさせる気がして

照れ隠しにいつ起きたのかを質問した…





ハルト「・・・・寝れるわけないじゃん… 」





「えっ?」





ハルト「裸のヒナを抱きしめてるのに寝れるわけないじゃん!

  それなのにヒナは…なんの夢見てたのッ!?」






ウサギの言葉に驚いて

自分の手でペチペチと腕やお腹を触ると

素肌の感触がしてグッと顔が熱くなるのを感じた…






ハルト「・・・・それ、なんの赤面?」





さっきからウサギが何を怒っているのか

分からないけど日が昇りだしたのか部屋が少し

薄明るくなっていて余計に恥ずかしくなり

ウサギの上半身から目線を逸らすと





ハルト「昨日っていうか…

 まだ数時間した経ってないのにもう浮気なわけ!?」





「浮気??何の話よ??」





ハルト「中津さんって誰!?」






ウサギの口から中津さんの名前が出てきて

驚いたけれどさっきの夢を思い出し寝言でも

言っていたのかなと思い「美容師さんよ?」と

答えると眉間のシワが段々と増えてきて…





ハルト「好きにしてくださいって何!?」



 



「・・・・プッ…そうゆう事ね?笑」






寝言を勘違いしているのが分かり笑いだすと

ウサギは「笑うの禁止!」とまだプリプリと

していてもう少しからかおうかと思ったけど

可哀想だから夢の話をしてあげた…






ハルト「美容室でお任せは禁止!

  好きにしてくださいなんて…言ったらダメ!!」


 




「・・・・・・」






ハルト「ヒナはちょっと目を離すと… 」






私を抱きしめて髪を触りながら

ブツブツと文句を言っている…




ウサギとこんな風にベッドの上で

抱きしめられながら話すのは初めてで

本来なら甘い雰囲気のはずなのに…






( 態度は甘いけど口がうるさいわね… )







ハルト「・・・・ヒナいつ帰ってくるの?」






「んー…4日から仕事だから3日には帰るけど…」






ハルト「4日からもう仕事なの?早いね?」






「基本祝日は3日までだからね

 4日だけ1日働いたらまた土日休みだしまだマシかな」






今年は4日が月曜日ではなく金曜日だから

年明けの憂鬱も少しは軽いし

5~6日あたりにコッチで初売りのセールにでも

行こうかなと思っていると…





ハルト「ヒナ…泊まりに来ていい?」





「・・・・帰ってきて?いいけど?」






ウサギは今年成人式で14日の月曜日まで

向こうにいるはずだから19日あたりかなと

考えていると「3日」と頭の上から

聞こえてきてパッと顔を向けた…





「成人式でまた帰らなきゃいけないでしょ?」





ハルト「だってまた3週間近く会えなくなるよ…」






髪を触っている手が頭から離れて

両手でギュッと抱きしめてくるウサギは

なんだか寂しそうで昨日の夜私を抱きながら

「ずっと会いたかった」と言っていた

ウサギの目が、少し涙ぐんでいた事を思いだした…






「・・・・はーちゃん?」





ウサギは返事をしないけれど

抱きしめてる腕にギュッと力が入ったから

それが返事なんだろうと思い

ウサギの背中に腕を回して話をした






「成人式は袴?それともスーツ?」





ハルト「・・・・スーツ…」





「スーツかぁ…似合いそうだね?笑

 地元の子達と会うのも数ヶ月ぶりとかでしょ?」





ハルト「・・・・仲のいい幼なじみとは先週会ったよ」





「・・・・先週??」





ハルト「・・・・たまたま会った…」





何となく嘘っぽかったけれど

私と離れていた時期の事だし追求するのは

やめておこうと思った






「他の子達とは会ってないでしょ?

 社会人の子達とは今後特に会えないわよ?」





ハルト「・・・・・・」


 



「私も成人式の時、最初はアパートに帰ろうとしてた…」





ハルト「・・・・なんで?」





「地元は田舎で何もないから

 お年玉もらったらアパートに帰って

 バーゲンに行こうとしてたのよ!笑」





ハルト「ふっ…ヒナはやっぱり大人じゃないよ…笑」






「20歳の時の話なんだから!!もう…

  でも結局帰らなかったのよ??」





ハルト「ん?なんで?」






「地元の子達と久しぶりに会ったら…

 楽しくなっちゃってね!

  また明日ねってズルズルといて

  ドライブ行ったり、はーちゃん達みたいに

  カラオケで騒いだりしてたら

  あっという間に成人式だったのよ!」





ハルト「・・・・・・」






「あの年くらいだったかな…

  よく年はそんなに実家にいないで

  大学の子達とバーゲン行ったり

  温泉旅行に行ったりしてたからね…

  社会人になったら休みも合わないし…」






ハルト「衣装着たさに巫女さんのバイトしてたしね?笑」






「バーゲンのお小遣い稼ぎしてたのよ!笑

  楽しかったし、あの時しか出来なかったから

  やって良かったと思ってるわよ?」






ハルト「・・・・そっか…笑」






「・・・・帰って来たら沢山会えるでしょ?」






ハルト「・・・・・・」






「何?会ってくれないの?笑」






ハルト「会うよ…平日も会いにくるから…」







ウサギは寂しいと死んでしまうっていうのは…

微妙に合っているのかもしれないなと思い

「ふふ…」と笑いがでた







「うん、だから地元でゆっくりしておいで!」






ハルト「・・・・毎日電話するからね?

  朝と夜だからね!!あとLINEも返事してよ!」

 





「ハイハイ…笑」






ハルト「あと、美容師の夢はもう見ないで!!」



 

 


「ハイハイ…(うるさくなったなぁ)」







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