第29話 ダリルVSロゼッタ
「凄い、みんなの見てると私の戦いぶりって……」
「え、どうしたの?」
「あの人達に比べると私の戦い方って下手だったでしょ?」
「え、そうかな……」
セリナの対戦した相手が突然の反省の言葉を述べる。どうやら彼女の戦いぶりは、とある理由で劣っていた。
「私には出来ないんだよね。片手で防御術張りながら、もう片方の手で攻撃術を繰り出すなんて」
「確かに、それはけっこう訓練いるよね」
セリナも彼女の言わんとしたことはわかっていた。確かに自分が勝てたのはそのおかげかもしれない。だがそれをあっさり認めるのも、失礼な対応だ。
「セリナさんも、それできるの?」
「い、一応ね……」
「そりゃもう、セリナは天才だから!」
その話を聞いていたホークが、突然横から割り出してきた。
「初めまして、君1組の生徒だよね。俺ホークっていうんだ、よろしく!」
(うわぁ、ホーク。私だけでなく彼女まで……)
「あ、初めまして。私はレイリス・フィルコ・ストーン、レイって呼んで」
「え、レイリスって?」
その名前を聞いてホークの顔色が変わった。
「どうかした、ホーク?」
「あ、いや……」
「あなた、どこかで会った?」
「き、気のせいだよ。あ、ってかそろそろ第2グループの時間かな?」
ホークはうまい具合に話題をすり替えた。その言葉通り、第2グループの生徒達が校庭の中央に集まりペア同士対峙した。
「んじゃ、俺も行ってくるか。ホーク見とけよ!」
「わかってるよ、せいぜいすぐにやられんなよ!」
その中にはザックスも含まれていた。ザックスと対決するのはホークが一回戦で対決したブラッド、ダリルと同じく首席の一人だ。
「それにしてもブラッドって奴、背は高いけど、痩せ型よね。足も細いし。全然強そうに見えないけど」
「全くだ。あんな見た目だからマジで油断してた」
「でも首席だってこと、胸のブローチ見たらすぐわかるでしょ」
「そ、それは……まぁそうだけど」
「まぁ、ザックスには悪いけど、私達のお目当ては……」
「やっぱ、あの二人よね」
セリナ達が注目せざるを得ないペアは、ザックスとブラッドのちょうど隣に立っていた。ダリルとロゼッタ、1組と首席と10組の首席が互いに睨み合いながら向かい合っていた。
「うぅ、なんかあの二人だけオーラが違う……」
「それはいいんだけど、ダリルが戦うってことは……」
その言葉に呼応するかのように、1組の女子達の声援が届いた。
「ダリルー、ファイトよー!!」
「頑張ってねダリルー! あなたなら優勝間違いなしよー!!」
「あぁ、またか……」
「レイリスは違うよね?」
「私は……そうね」
しかし今回は違った。対するロゼッタにも同様のことが起きたのだ。
「ロゼッタさん、頑張ってください!!」
「俺らマジでロゼッタさんの味方っす! そんなイきり野郎ぶっ潰してやるっす!」
「げ、あいつらは?」
「10組の男子どもじゃん……」
「ていうか、ロゼッタもいつの間にあんなファンが出来てたのね」
「いやまあ、昨日も男子からけっこう声掛けられてたよ。彼女モテるんだよね」
「へえ……」
「お、俺は仲間じぁねぇから!」
カティアが軽蔑するかのような目でホークを見つめる。オルハがセリナにこっそり耳打ちした。
「ホークといい、男子って考えていること一緒よね」
「うん」
各ペアの準備が整ったのを確認し、シルバードが戦闘開始を告げた。
「うぅ、始まった!」
「さぁ、ロゼッタが勝つかダリルが勝つか?」
「ていうか、二人とも筆なしかよ?」
「まぁ、そりゃそうでしょ」
その時だった。ダリルが体中から発していた火花が消え、右手の手首から先が雷で包まれ始めた。
「あぁ、あれは!?」
「マジで、速攻で決める気?」
セリナ達もダリルがどんな術を放つか予想できていた。
「おい、てめぇ。防御術が得意って言ったっけ?」
ダリルの質問にも無口のまま、ロゼッタは相変わらず表情は変えず防御術を張ったまま立っている。
「一つ言っておくぞ。俺の投雷、防御術で防げるほど甘くねぇ。たとえ
「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと攻撃したら?」
ダリルの挑発にうんざりしたのか、今度はロゼッタが逆に挑発した。
「うわぁ、ロゼッタ強気だなぁ」
「はは、相変わらずあの子は……」
もちろんその挑発にダリルが黙っているはずがない。
「なめるなよ、てめぇ! 人がせっかく親切に教えてあげてんのによ。防げるもんなら、防いでみろ!」
そのダリルの大声が聞こえた直後、右手に溜まっていた雷を一気に投じた。そして一回戦と同様、強烈なまでの光が放射され、その直後に轟音が鳴り響いた。
「あぁ、オルハの時と同じ……」
「だから言わんこっちゃない」
「これは、さすがに……」
だが違っていた。間近で観戦していたギャラリーが騒めいている。なんと光った直後から、ロゼッタは何事もなかったかのように直立していた。
「は!?」
「う、嘘でしょ!?」
「ロゼッタ……」
それだけではない。ロゼッタが張り巡らした魔盾の中心よりやや上の位置に、何やら槍のような物が刺さっていた。
「まさか、投雷が!?」
その時後ろで疲労回復のため、後ろで座っていたミリアも立ち上がり驚愕した。
「刺さってる。こんなの初めて見た……」
「あれが!? 確かに槍のようになってるけど」
「ていうか、マジで本当に防ぎやがった……」
「でも一発目はよくても、二発目は……」
その光景を見て、ロゼッタを応援していた男子生徒も沸き立つ。
「スゲェ、さすがロゼッタさん!!」
「相手も戦意喪失ですよー!! 今がチャンスですよー!!」
その言葉通りダリル本人も唖然としていた。
「て、てめぇ……」
「声が震えてるよ。その程度なの?」
ロゼッタは涼しい顔でまたも挑発する。ダリルは声だけでなく手も震えていた。
「二度目があると思うなよ!」
ダリルは動揺しながらも、すぐに切り替え二発目の投雷を放った。再び強烈な光と爆音が響き渡る。だがやはり結果は同じだった。ニ本目の槍が、ロゼッタの手前に刺さっていた。
「くぅ、この野郎!!」
動揺が徐々に怒りの感情へと切り替わってきた。ダリルは左手も駆使し3発目、4発目、5発目と間髪入れず、投雷を連発する。しかし、ことごとくロゼッタが張った魔盾に刺さるばかり。
「凄いです、ロゼッタさん! 流石ですー!!」
「ちょっとダリルどうしたのよ!?」
「しっかりして、ダリルー!!」
10組の男子生徒からは熱い声援が、1組の女子からは落胆混じりの声が響き渡る。
だがアグネスは何も驚かなかった。
(魔盾は消費が激しいけど、ロゼッタの魔力量は折り紙付きよ。あの厚さを誇る魔盾はそうは簡単に張れない。投雷ごときじゃいつまで経っても壊せないわ)
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