第6話 三雲社長

僕は少々ノリのきつい後輩と共に今日会社に来た理由を消化すべく社長室へと向かった。


「失礼します。先日の件でお話があり参りました。」


会社なので言葉遣いに気を使いながら入ったのだが、入るや否やなんだか社長の様子がおかしい。


…おいなんであの女社長はニヤニヤしながらこっち見てんだよ。


「やぁやぁそんなに硬く言うな、それに昼にかかりそうなこの時間に可愛い後輩ちゃんと同伴出勤だなんて、退院して早々やるな色島くんは」


なんだそんな事でこの人はニヤけてたのか、つか、白井の事は良いのかよ?こいつ昼出勤かましてるよ?


「はぁ、あの三雲社長、今日こいつとここに来た理由は-」


「そう!理由は!センパイったら、会社で私を見つけたと思ったらこちらへ駆け寄ってきて、『すまない、僕と一緒に社長室に来てくれないか?白井が居ないと僕はあそこまで行く勇気がない…』と言われたので仕方が無いので来てあげたんですよ✩」


おい、それだと俺の方が遅く来たみたくなってるじゃないか、いや、他にツッコミどころがあるのだけど、一旦置いておこう。


「やはりそうだったか、うんうん、そうじゃないと白井くんがここに来る理由もないしな、納得だ」


ちょい待て、何納得してんだ、ツッコミ不在もいいところだが、サラッと自分の遅刻すら揉み消したのは流石といったところか。


……なにがさすがやねん


「白井くんにはファンクラブがあるのに君は中々強欲な人だな。」


ちょっと笑い混じりに僕を弄ってくる社長はとても楽しそうだった。


つか、白井にファンクラブなんてあるのか、社員も相当疲れてるんだな。


「三雲社長、そろそろ本題をいいですか?僕を弄るのは充分楽しんだでしょう?」


「はっは!そうだったそうだった忘れてたよ、君の今日の目的をね、さぁこの前の診断結果だろう?どうだったんだい?今の様子だとだいぶ元気そうだから、いじってしまったが早く見せてくれ。」


俺は今から社長の期待を裏切るような診断結果を出さざるをえないが、それは仕方がない事だ。


「これが僕の診断結果です」


三雲社長の手元へと行った用紙を白井も覗き込むような形でそれを見て2人は青ざめた顔で俺を見た。


何を言葉にしようとしているのか分からないが2人は空いた口がただ声を発しないままピクピクと動いているだけであった。

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