第5話 後輩
僕の会社は自宅から出て徒歩で2、30分位かかるちょっと遠めの場所にある。会社から家に行く時ぐらいしか僕は外を出ないため、健康の為に軽い運動になってくれるだろうと歩って来ていたが、どうやら意味がなかったようだ。
会社のロビーを抜け、エレベーターに乗ろうとした時、遠くの方から焦ってこちらに来る人影が見えたので、ドアを即座に閉めるボタンを押したが、間に合わなかった。
……俺は良いがなぜこいつがこんな時間に居るんだ。
「センパイ!今わざとドアを早く閉めようとしましたね!?ただでさえ遅刻なのに、こんな所で遅延をくらえないんですよ!!」
このちょっと騒がしめな女性社員は残念なことに俺の後輩にあたる人、白井ちゆりである。
白井は能力があるのに上を目指そうとしたり、真面目にやろうとしたりしないせいで、今でも俺の下にいるが、実際はかなり出来ると思っている。
白井が作った資料をよく確認するために目を通すのだが、文章が綺麗にまとめられていたり、グラフが見やすかったりする。
当たり前のことだ、少なくとも俺の資料とかとは違い、間のとり方がとても上手く見ていて窮屈にならない。大事なことである。
「おいなんで、お前こんな時間に来てんだ、俺は社長からOK貰っているから、今俺は割とルーズに来ているがお前は違うだろ。」
「聞いて下さい!センパイ!私今日寝坊しちゃって-」
「おうおう、お前の話はそこまでにしろ、何も知りたくないし、お前の話は長くてとてもじゃないが聞いてられない。」
「え!?酷くないですか!?可愛い可愛い後輩がセンパイにちょっとお茶目イベントの寝坊ルートを聞けるんですよ!?今聞かないと、損ですよ!!」
こいつは自分の事をゲームのヒロインだと思っているのだろうか、最後の方は安っぽいセールだったし、キャラが豊富なのはいいが渋滞気味だぞ。
「まぁいい、僕と今から社長室行くぞ、お前もいた方が都合がいい。」
この会社を辞める都合上、区切りのいいところまでやったら引き継いでもらわないといけない、そしてその引き継ぎ先を僕は白井にしようと思っていた。
運がいいのか悪いのか、来てすぐ鉢合わせた厄災と俺は社長室に行くことにした。
「何ですかぁ?センパイ、まさか、あの怖い怖い女社長をビビって可愛い後輩ちゃんとじゃないとあそこに立ち向かう事が出来ないんですか?仕方がありませんね、心の広いこの後輩ちゃんがしっかりセンパイを連れてってあげますよ✩」
前言撤回だ、色々な意味で突然こいつとあったのは運が悪かった。
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