第7話 してやれる事

「せ、センパイこれって……」


「し、色島君も中々面白い冗談を言うね、さっきは君が元気そうで嬉しくてちょっとダル絡みをしてしまったね、悪かったな、さ、本当のやつを出してくれ。」


「社長、これは本物の俺の診断結果です。んで、それを見たらわかると思いますけど、俺はもうあまり長くないようです。」


白井と、三雲社長は俺の診断結果にありえないといった顔を浮かべながら目の前にある紙と俺の事を見ることしか出来なかった。


「白井、その診断結果を見て僕は後どのくらい持つと思う?」


「ふぇ!?、え、あ、、長くて2年とかですか??短くて1年かもですけど……」


やっぱりな。


「社長はどう思いますか?」


「いやいや、こんなのを見てはい何年ですねなんて分かるはずないだろう、」


これが普通の反応だ、診断結果だけでどのくらい持つかなんて分かるのは医者ぐらいだ。白井のようにぽんとはいえない。


「僕の余命は持って2年、早くて1年それが医者から言われた残された時間です。俺は今日にでも引き継ぎ作業を終わらせ、この会社を辞めたいと思っています。残り時間が少ないのでね」


ここで重要なのは俺が手術の余地がないと思わせること、そしてそれに突っ込んで来るのが居るってのを俺は知っている。


「ま、待ってくださいセンパイ!でも、こんなに進んでしまってるかもしれないですけど、もしかしたらこれは手術すれば声帯を諦めることにはなりますが、命はまだ大丈夫かもしれないですよ?」


「ッ!それは本当か色島くん!!」


白井はやはり前から思っていたが相当頭が切れる、なんでミスばかりするのか不明だが、しっかり生かせればこれはこの会社の最大の武器になると思っている。だから安心できる。


「そうですね、助かるかもしれないと医者には言われました。ですが、どうでしょう、声帯を無くしてまで僕は生きる理由がありません。趣味も無ければ、親もいません、この世での娯楽と言えるものが僕には合いませ、ならば!僕に生きる理由を教えて下さい!」


俺はちょっと声を張った、そのせいかちょっと喉の奥の方が痛い。だがそれほど大事だから声を張った。


「「………………」」


こんなに2人の長い沈黙を僕は聞いたことが無い


いや、沈黙なのだから音は無い音はないけど虚無の中に雰囲気すら漂っていない。完全な無。


「社長、僕が引き継ぎ先にしたいと思っている人はもう分かると思いますが白井です。」


「ッ!勝手に話を進めないでください!センパイ!!私は!私はぁ…センパイのように上手く仕事も出来なければ、センパイが居ない会社で仕事をするなんて無理です……」


「大丈夫だ、白井お前なら出来るよ、普通余命が何年あるって聞いて医者の診断通りに余命を言い当てれるやつなんて居ないよ。お前がいるから僕は安心してこの話を今日持ってこれたんだ。僕のわがままを聞いてくれて。」


俺は白井の傍へ行き頭を撫でてやった。


こうゆう時こうするのが効くだろう、雰囲気もくそもなく俺はそう思いながらやった。そこになんの感情も無く。


「分かりました。良いですよ、頑張りますよ!もし帰ってきたくなっても居場所が無いくらいに!!やってやりますよ!!」


「よし、それでこそ白井だ、頑張ってくれ、三雲社長話はまとまったし、いいよね?普段は愚痴に付き合って上げてるんだ、その精算だと思って辞めさせてくれませんか?」


「……そうか、確かに私よりも先に逝く者の人生を縛り付けるほど私は悪人にはなれないな、仕方が無いもったいないが許そう。その代わり!」


え、この状況で条件出してくるのかよこの人穏便に逃げるためにひと芝居打ったのに、


「今日は、そこの可愛い後輩ちゃんと君と私で飲みに行こう、この前の続きだ。きっと君の事だ今まで誘いを受けても断っていただろう、面倒事を押し付けるんだからそれくらい最後にどうだ?」


三雲社長には敵わないな、俺の事をすっかり見抜かれている。


おい、俺横でそんなに目をキラキラさせるな俺は病人だぞ。


まぁし方が無い付き合うか、でもそうなると困ったな、どうにかして莉花に伝えないとなぁ、弱ったなぁ。


「僕は1度家に戻り、財布を取ってから行きます。白井の引き継ぎ会とでもしましょうか、俺が持ちます」


「え!いいんですかセンパイ?これからニートになる人がお金を浪費しちゃっても??」


「まぁでも色島くんがそうゆうのも初めてだし今日は甘えさせてもらおうか」


よし上手くまるまったな、これで一安心だ。


「じゃぁ僕は引き継具ための資料作ってくるのでこれで、いつもの時間でいつもの場所でいいですよ。」


「そうだね、そうしよう!なら今は1回解散だ、また夜に会おうか。」


「はい、白井戻るぞ」


「はい!分かりましたぁ!では社長また夜に✩」


俺達は仕事のために一時その場を後にした。


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よし、帰るか。


資料制作とディスクの撤退作業を終え俺は帰る用意をしていた。


「白井、俺はそろそろ出るからあとは社長に聞いてこい、あとこれ資料な」


「はいありがとうございます!…センパイあの、これからも一緒に食事とか行ってくれ無いですか?分からないことがあったら聞けるように。」


それもそうか突然投げたんだ、そうなるな。


「いいよ、あまり高頻度だと金が無くなってしまうから程々にな」


「ッ!はい!センパイ✩」


白井は嬉しそうに返事をしていた。


まぁあいつに限って分からないこともないだろうし俺に聞くより他に当たった方が早いからそんなに多くないだろう。


俺は会社を後にし、家まで駆けていった。


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俺は今家の前にいる、だがしかし如何せん緊張してしまってる。


何となくであるがやっぱり帰った時に誰かに返事して貰えると思うとなんか嬉しいな、


そんなことを考えながら俺はドアを開けた。


「ただいま」


「あ!おかえり玖呂戸さん!」


そうだ、この声、この透き通った声に長い茶混じりの黒髪、大きな目をしているのにキリッとした表情のこいつがいるから嬉しかったのかもしれない。


まぁJKが家にいるなら誰でも嬉しいか、もっとも他の猿と違って俺は手を出すつもりはないけどな。


「今日は悪いけど会社の社長と呑む事になったんだ、悪いが夜ご飯は1人で済ませてくれないか?それとも軽く済ませるつもりだから家に帰ってきたら一緒に食べるかい?」


彼女はちょっと考える素振りし答えた。


「いや、玖呂戸さんに悪いから今日は1人で済ませるよ。」


「ありがとうなるべく早く戻ってくるけど寝てていからな。」


「うん、大丈夫ありがとう!」


見た所によると家事とか終わっている様子だった。


「ただいても暇だろうしこれやるよ」


「ん?え、なんでこんな、いいの?」


俺は帰ってくる時高校生が使うであろう参考書などを人通り揃えて帰ってきた。


中身を見た時に内容や解説がしっかり載っているものだったから大丈夫だろう。


「これを少しでもいいからやろうな。お前はいつか帰らなきゃ行けない、その時が来るまでいつまでも俺の家に居てもいいけど、いざ帰った時に、勉強出来なかったら大変だからな、しっかりやっておくんだぞ?」


「玖呂戸さん、何から何までありがとう、こんな事してくれる玖呂戸さんはやっぱり変わってるよ」


ちょっと笑いながら莉花は言った。


笑ってる方が似合うな。もうコンビニであった時みたいな消えそうな、震えている顔を俺はさせたくない。


まぁ僕は変わってないけどな。


「あ、そうだ連絡ある時に出来ないのひどいから、LINE交換しておこう、その方が何かと楽だからね。」


「あ、うん!OK!ふふ、ありがとう!」


なんでLINE交換しただけでこんなに喜んでいるんだ?分からないなJKってやつは


「よし、そろそろ時間だし、俺は行くよ。」


「うん!わざわざ私の為に寄ってくれたんだよね?ありがとう玖呂戸さん!」


間違いはないから素直に俺は頷き、そのまま俺は玄関を出ていった。


この後あんなに呑まされてしまうとは思わずに。

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