第2話 報い

目が覚めると、知らない部屋知らない窓から朝日が僕を目覚ますように光を当てている。


……ここはどこだ?


程なくして美人なナースさんが、僕の所へ来てお医者様の元へと案内してくれると言う。


「こんにちは初めまして、医者の齋藤という者だよ、ちょっとしたした質問からするよ、いいかい?」


「はい」


「君の名前と、持病、最後に覚えている事を教えてくれないかい?」


「はい、僕の名前は色島玖呂戸、持病は特に無いと思います。」


昨日の夜は仲良くさせていただいてる三雲社長が僕が疲れているように見えたからねぎらいも兼ねて食事に誘ってもらったはず…


「最後に覚えていることは……そうですね、社長と一緒に夜ご飯を食べに行こうと思って……そこまでしか覚えていません。」


誘ってもらって僕は確かに三雲社長と会ったが、何を食べたか覚えてないな


「ありがとう、脳は正常に機能しているようだね、色島さん君は社長に感謝しなきゃいけないね、昨日の晩君は緊急搬送されて来たんだ。」


…なるほど、だから昨日の夜の食事の事が思い出せなかったのか、多分食事まで辿り着けなかったのか、後で連絡を入れておこう。


「本題はここからなんだがね色島さん、あまり気を負わないで聞いて欲しいのだが君は……」


為ないでくれ、かえって緊張してしまう


「君は喉頭癌だ」


……


「それもステージレベルがIV、つまり命危険があるレベルまで来ている。今までになにか飲み込みずらかったり、下が回らない、嘔吐など無かったかな?」


呂律が回らないのは疲れているせい、飲み込みずらかったのは風邪のせいと色々理由をつけていたが確かに体の痛みがあったりしたのは何故だろうとか思っていたが、まさか癌だったとは思いもしなかった。


「その顔だと思いた当たる点がいくつかあるようだね、君は今こうやって話しているのも奇跡なぐらい進行している、余命も長く見積って2年、早ければ1年も満たない間に亡くなってしまうだろう。」


「ん〜、そうですか、分かりました。では失礼します。」


「おいおい何処へ行く、手術をすればもしかした命を落とさずに済むかもしれんのだぞ、やるなら早い方がいい、幸いプロの医者が今この病院内に1ヶ月程居てくれる、声帯を切除する関係上声は出せなくなってしまうのだが、やる価値はあると思うぞ?」


「いえいえ、声を出せなくなって生活しても今後大変ですし、手術するお金なんてありません、なら恩がある人にいち早く感謝を伝えに行かないと。」


僕はカラッと言った、何せ僕は恩を伝える人も社長くらいだ。


親はキャバ帰りの末帰らなくなった父とそれを病み首をつった母。もうこの世にはどちらも居ないし、俺だって趣味もなければ生きる理由も悔いもない。


…手術して生き長らえたところで意味が無い。


「そうかい、色島さんがそう言うなら強制はしない。だけど、生きていれば何かしらいい事がある、恩を返すことだってできる。それを忘れないで残りの余生を生きてくれ、抗がん剤は欲しいかい?ちょっとでも楽になるぞ?」


「……髪が抜けない程度の弱いやつあるならそれでいいですよ。」


俺は強がりにそう言った。


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医者から薬をもらったあと病院で軽くご飯を食べ俺は退院した。


……なんで病院飯はあんなにまずいんだ..


時間を見ると午後14時を回っていた。かなり長居したようだ。


少し遅いが社長に連絡を入れよう。…今から直接行って辞めることも言おう。迷惑はかけたくないが出勤中に倒れても困る。


僕はスマホの数少ない連絡表から社長に電話した。数コール後には出てもらえた。


「あ、三雲社長昨日は-」


『色島君か!?大丈夫かい?昨日いきなり頭が痛いと言ってそのまま倒れてしまった、ものだから私はてっきりもうダメなのかと思ったよ!』


……電話して色々報告しようと思ったが、それを遮られ色々喋られた。この人心配事があるといつもダーッと喋ってくる、よく社長なんかになれたいつも思ってる。


『あ、すまない、取り乱してしまった、君の元気そうな掠れた声を聞けて少し安心したよ。』


「三雲社長、元気そうな掠れた声って、なんすか?まぁ、色々話したいので今から会社に行きます。それだけです。」


微妙に弄られたものの要件は話終えたし、さっさと切るか、


『いや、待つんだ、今日退院した者を会社に来させる程困ってないし、ましてやブラックでもない夜までしっかり休み、今日は昨日の夜の続きと行こうじゃないか?』


「……変に意味深に言わないでください、分かりました、夜昨日言っていたお店で待ってるとします。話はその時しますね。」


『うむ!優秀な社員君は話が分かるようだな!ではまた夜会おうじゃないか!』


機嫌が良くなったのか、テンション高めに切られた。

…これだからこの人は疲れる。まぁ悪い気はしないけど。


昨日の確かに店は19時頃に行く予定だったな、多分その頃に行けばいいのだろう。それまで家に帰りながら休みますか。

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……色島…おい、色島!お前なんでもっと楽しそうに出来ないんだよ!


「ッ!はぁはぁ、夢か、なんだ、寝てしまっていたのか。」


帰宅し色々あって疲れてしまったせいか。どうやら寝てしまったらしい。夏というのもあって甚平服を着ながら家の日陰に居ると気温が丁度よくぐっすり眠れた。


「と、そういえば時間はっと………え〜とぉ?

うぉ!嘘だろ!?23時30分!?」


完全にやらかした、つい寝てしまったせいで、しっかり遅刻をかました。


ふとメッセージアプリの通知欄を見ると鬼のようなメッセージと鬼電がかかって来ていてた。これは申し訳ないことをしてしまった。とりあえず連絡を入れておくか。


〈三雲社長すいません、帰宅後時間まで睡眠を撮ろうとして、そのままこの時間になってしまいました、後日また、一緒に行きましょう!〉


よし、こんなもんでいいだろう。


僕が社長にメッセージを送った直後にすぐスマホが鳴った。


《社長を待たせるなんて、ましてやレディーですよ?いい度胸してますね》


相当お怒りだ、これは今からでも行った方がいいか?


こんなことを考えてると再びスマホが鳴った。


《まぁ今回は退院直後ということで大目に見ましょう、明日は昼出勤でもいいから、社長室に来るのよ?あ、もうご飯食べ終わったから来なくてもいいからね?》


俺の行動の先読みをされた上に呼び出しまで食らった、まぁ自業自得だからなんとも言えないが。


〈了解です。ありがとうございます。〉


許して貰えた事だし、コンビニにでも晩飯を買いに行くか、今から作るのも面倒だしな。服も着替えなくていいか、どうせ知人なんて居ないしな。


「おいおいまじか雨降ってんじゃん」


財布を持ち適当な準備をしたとこで外へ出ようかと思ったところ。外を歩くには少々酷い雨が降っていた。


まぁ近くだし、傘さしてすぐ帰ってくれば問題ないか。


そんなことを思い歩いて10分ほどの道を雨音を楽しみながらあるいていたら、程なくして着いた。そして気がついた、夜の24時を回ろうとしているのにそこでたってなにかに怯えながら、スマホで何なにかしてる、年齢的には女子高生の思われる人が入口に立っていることに。


…おいおい、こんな時間に立っていたら変なやつに絡まれるぞ?大丈夫かよ?つか、容姿のレベルが高ぇなおい、最近のはこんなのばっかなのか?


そんなことを考えながら、店内に入って行き、色々迷いつつも15分ほどで買い物が終わった。


よし、帰って食って明日に備えて寝るか。


そう思って出ようと思った矢先、彼女がまだ居た、何しているか分からないがまだあそこにあそこに立っていた。


「……すみません、折り畳み傘ってありますか?」


自分でもなぜ定員にこんな事を聞いたか分からないが、聞いたからには買うしかないか。


「あいざとーございやひたー」


滑舌が悪い上に言葉遣いも適当な定員に挨拶されながら出てきた。


そしてコンビニの出口付近、丁度雨が当たらなさそうな辺りにいる女子高生を横目でちらっと見て気がついた。


……綺麗だ…


その場で立ち止まってしまったことに気がついた頃にはもう遅かった。


「……なんですか?何か用ですか?」


綺麗な容姿から放たれる美しい声で、攻撃的な言葉のような、怯えながら自分を守るような声色で言われた。


「…君のような、高校生くらいに見える女性の方がこんな夜にしかも1人でコンビニの前に居るなんて危ないなと思っただけだよ。それに私がコンビニに入る前から居るもんだからちょっと気になったのさ、それだけだ、でわな」


よし、当たり障りのないような逃げ文句を瞬時に思いついた自分を褒めよう。辺に絡まれる前に帰るか。


「え?それだけ?もっとこうなんかナンパじみた口説きでもしてくんのかと思った。」


…なんだ、ナンパ待ちか、変に心配して損した。いやなんで俺はこんな初対面の人を勝手に心配してるんだ?なんか変に自分にむかつくからこいつにでも当たってやろ、


随分自分勝手な理由だと分かってはいるが、何となくいじってみることにした。


「なんだ、ナンパ待ちかこれは要らんことをしたな、それともこんな僕にナンパでもされたいのかい?」


俺の人生で初めて誰かをナンパた割にはいい感じに言えた気がする。

そうだこいつ見るところによると傘なさそうだし、傘渡せばきっと家に帰ってくれるだろう、最初からそうすればよかったのか。


「今日は冷える、そんな格好で風邪でも引く前にさっさと家に帰るんだな、こんな日にナンパ待ちなんて君は向いてないよ。傘欲しいかい?予備があるんだよ。」


さっき買って予備になった折り畳み傘を差し出し、颯爽と去ろうとしたら、


「ッ!あ、ちょっと待って!!」


引き止められてしまった、これ以上話していて勘違いした人が警察に連絡でもしたら面倒なので、正直もう撤退したいのだが…


「あの、私帰る家無いんで今晩泊めてもらっても-」


「お断りだね、」


声がでかい、誰かに聞かれたらホントに危ないので遮ってまで言った。少々冷たかったかもしれないが、断りやすくもなるだろう、それにこんなに容姿が良くて捕まえられるのが俺だけってのも変な話だ。別を当たって欲しいものだ、


それを彼女に言うと、驚いたことにもう他のとこを当って乱暴されて逃げてきたという。


おいおい、女子高生に手を出すやつなんているのかよ、確かに容姿は綺麗だが大人として完全にアウトである。


まぁこいつからの提案は明日の朝までいいから俺の家に泊まらせて欲しいという事か、まぁ朝までだしいいか。


そう考えながら僕は時間を見ると24時30分を回っていた。


まぁ流石に僕もそんなに鬼ではない、ここまで言われると可哀想だな、よし、久々に誰たかの手料理を食べてみたいしきっとできるだろう。これを条件に泊めてやろう!この程度だったら死ぬ前にしてもいいだろう。


朝ごはんを作ってくれないか?と提案すると彼女は驚いた顔して聞き返してきたので、思わず俺も聞き返してしまった。


何はともあれここは寒いから早く帰りたい





莉花、玖呂戸、両視点でかけて行けたらいいなぁって思ってます。

仕事をしながら書いてますので毎日投稿できるか分かりませんが、なるべくやりたいと思います。

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