第9話 王女の気持ち
「ウォルには、婚約者がいるんじゃないのか?だから・・・・」
俺はアリス王女が言っていた言葉を思い出した。 婚約者がいるのに他の女性を邸に入れるのは、ダメだと。
「何を心配されているのかわかりませんが、私には婚約者は、今はいません。しかしあと少しで婚約者の発表がされるところでした」
婚約者が今はいない?
「魔王が誕生したので、この世界はそれどころではなくなったのです。私も相手の方も、これは運命だと思っています」
「運命?相手も納得しているのか?この世界に自分の意志は尊重されないのか?」
「私達はお互い、親が、民が決めた婚約ですので、2人とも気持ちはありませんから。貴族であれば仕方ありません。それが上位であればあるほど」
悲しい世界なんだな。
例え失恋しても、好きな人に好きだと言える俺がいた世界は幸せな世界なんだな。 俺はハナに言えた。好きだと言ってはいないが、伝わったはずだ。俺はハナからの返事を聞くまで死ねない。
ウォルが突然席を立った。
「王女様!」
そこには王女が俺達を見ていた。その表情はどこかせつなそうだった。
「ウォルト、あまり余計な話しは、するでない」
「はい。申し訳ありません」
「ライト、もう気が済んだか?」
「そうだな。納得は出来ないが、俺達が元の世界に戻る為に、俺は戦う。でもハナを・・・ハナを必ず探せよ!」
「ええ。こちらで探しましょう」
この王女の嘘つきが。だが、俺が魔王に勝つ為には、王女の力が必要だと聞いた。
「いつから動けばいい?」
「魔王がまだ、誕生して数年しか経っていないので生み出せる魔物もまだ弱いです。まだこちらの騎士達で対応できます。今はまず、魔法の使い方の訓練と、ライトが使う武器の元であるオリハルコンを洞窟から、ご自身で取って来て下さい。洞窟にも魔物はいます。少しずつ戦いに慣れるしかありません。経験を積んでください」
「わかった。じゃあ今日全ての魔法を教えてくれ。明日には洞窟に行きたいから」
ウォルが焦って
「ライト様それは無理です!ライト様は全属性の魔法が使えますが、魔法を使うには体内の魔素を消費します!魔素にも限りがあります。魔素がなくなると、死に至る事もありますので、まずはご自身の魔素量を増やす訓練をされて下さい」
そうか、すぐには行けないんだな。 「わかった。じゃあ今日できる範囲でやる。王女も行くんだろう?」
「ええ。無属性は、私しか教えられませんので」
王女は答えながらウォルを見る。 王女はウォルの存在を気にしているように見えた。
「王女、どうかしたのか?」
「いえ。ウォルトもライトの訓練に付き合いなさい」
王女はウォルに命令をしたが
「私は水属性と風属性しか使えませんので、この2つなら城にトップレベルな者がおります。私は今日は帰らせて頂きます」
王女の顔色が変わった。
やっぱり!王女はウォルを気にしているんだ。 ウォルは挨拶を済ませると城を出て行った。
「王女、王女はウォルが好きなのか?」 俺の言葉に王女の顔が真っ赤になった!!
「ライトに関係ない!!」
怒った姿は普通の女の子だった。
「もしかして、さっき言ってた婚約者って王女の事なのか?」
「ライト!もう言うでない!訓練に行きます」
否定しないって事は、そうなんだろう。 王女を見る限り、ウォルに気持ちがあるように見えるが。
ウォルは気持ちがないと言っていた。
王女が少しかわいそうだと思ってしまった。
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